ここ数年は新型コロナウイルス感染症の拡大があり、リハビリ業務も多大なる影響が出ています。
そんな中、昨年の7月に担当患者さんを病棟別にカテゴライズする担当制に変わりました。
いわゆる「病棟制」ということです。
これまでは、リハビリの新患オーダーが出たら、
患者情報や内容を確認して、対応可能なリハビリスタッフへ主任などの役職者からメンバーへ割り振りしていましたが、病棟別になったことで様々な事象が起こりました。
それから約半年以上が経過し、今でも継続している状況です。
そこで、これまでの経験や得られた知見、僕なりの今後の展望を記載していきたいと思います。
各病棟のリハビリ担当制へと変わった!
まず、大前提として病棟制に移行した理由は、、、
新型コロナウイルスの「感染拡大防止」です。
つまり、これまで当院のリハビリ介入は、受け持ち患者さんが10人いたら、
各病棟にまたがっていました。
病棟で勤務する看護師とは違って、リハビリ業務は病棟内で完結せず、
いろんな病棟に出入り出来る状態だったんです。
そして、万が一 リハビリスタッフの誰か1人にコロナ陽性者が出た場合は、
これまで、介入したそれぞれの病棟患者さんのリストアップを行うことになり、
その患者さんの1名が、もしもコロナ感染ともなれば、その病棟全体へ感染が波及する
クラスター状態になるリスクがありました。。。
しかも実際に近隣のリハビリ関係の病院などでは、そういった事例も散見されたので、
当院でも早めの対応を早急に迫られた状態でしたね。
そして物事の展開は早く、人数の多いPTとOTは
各病棟に割り振る人数を調整してメンバー配置を行うことになりました。
「病棟制になるぞ!」と決めてから、実際に調整するまでの期間はおよそ1週間程度だったと思います。
それぞれが、早急に申し送りを作成し、各担当から新しい病棟の担当者へ受け渡す作業を短期間で完結しました。
各病棟にリーダーが誕生した
当時のリハビリスタッフは総勢50名であり、
内訳がPT30名 OT15名 ST5名ほどでした。
この中で、STは病棟制にすると、少ない人数で縛りが発生するため、
PTとOTのみ病棟制となりました。
そして、当時の各病棟の配置人数が以下の通りです。
病棟担当制 | PT配置人数 | OT配置人数 |
外来リハビリ | 4名 | 3名 |
ICU | 3名 | 2名 |
HCU | 1名 | 2名 |
整形外科病棟 | 7名 | 3名 |
脳神経、神経内科病棟 | 6名 | 5名 |
循環器病棟(心臓リハビリ) | 5名 | 3名 |
感染専用病棟 | 1名 | 1名 |
泌尿器科病棟 | 4名 | 2名 |
外科病棟 | 5名 | 4名 |
小児病棟 | 5名 | 2名 |
内科病棟 | 4名 | 2名 |
血液内科病棟(がんリハ) | 6名 | 4名 |
呼吸器内科病棟 | 4名 | 3名 |
もちろん、これだけの人数配置ですので、完全な専用の病棟制ではなく、
個人によってばらつきはありますが、1人だいたい2~3病棟を掛け持ちの状態です。
ここで特筆すべき事は、各病棟にリーダーが誕生したことです。
これまでは、リハビリの各部門に小分けされた。しかも形式的なグループはありましたが、
そのグループとは別に、より臨床業務に直結した病棟チームのリーダーが必要になったことです。
つまり、、これまでよりも、患者さんのリハビリ介入に関して、
リーダーがマネジメントしていく必要が生まれたことになります。
この出来事を各リーダーがポジティブに捉えるか、はたまたネガティブに捉えるかで、
臨床業務の成り行きがだいぶ変わりました。。。
疾患別の知識や技術が必要になった
各病棟によって疾患別の患者さんが入院することになるので、
あるスタッフは脳血管疾患を多く受け持つことになったり、
あるスタッフは呼吸リハビリを行う必要が多くなったりと、
以前のようなオールマイティーな感じではなく、
各疾患に順応するための知識や技術などのスキルが必要になりました。
それでも根底にあるのは、急性期発症の疾患であるため、
普遍的なリスク管理やバイタルサインの変動のしやすさ、状態の不安定さは
どの疾患においても急性期リハビリとしては押えておくべきスキルです。
ですが、これまでよりも専門性の高いリハビリが必要になります。
そこで、ある病棟のリーダーに見受けられたことが、
メンバーに対して、その疾患に必要な教育をリーダー自身が行っていることです。
これは、教育委員会として、取り決めたことではなく、自発的な派生として、
有志の勉強会的な感じですね。
ただ、これが各病棟リーダーに広がったわけではなく、
特定のリーダーとその病棟メンバーのみの出来事でした。
当然として、このような勉強会などは、明確なリーダー業務ではないです。
なので、一方ではリーダー業務の負担を嘆くスタッフがいたことも事実ですし、業務過多としては理解できます。
ジョブローテーションを取り入れること
とはいえ、特定の疾患のみに対応し続けると、ゆくゆくはルーチン化してしまい、
個人のスキルやモチベーションは停滞すると考えました。
そのため、スタッフのスキルを活発化し動機づけを高めるようにと、
若手メンバーには約半年に1回のペースで配置転換。
いわゆるジョブローテーションを行っています。
OTとして、多様な疾患に対応できるジェネラリストと、
自分自身の得意分野を活かせるスペシャリストの二刀流が求められます。
そこには業務成績や効率化など、組織をデザインする観点と、
若手メンバーの成長機会を後押しする教育の視点が大事です。
小さなチームでもマネジメントによって特色が違う
僕としては病棟制におけるリハビリ介入が、
マネジメントの本質的な評価として判断されると思います。
病棟制リハビリ介入で評価されるのは、その配置されているメンバーではなく
マネジメントをしているリーダーですね。
なので、患者さんを割り振りした後も、
「そういえば、あの患者さんどうなったの?」とか、
「〇〇さんの方向性ってどうなりそう?」とか、
リハビリ室で、同じ病棟メンバーの介入を見かけたら、
「凄いね、ここまで出来るようになったんですね!」って感じで
常に病棟メンバーや患者さんのリハビリ介入を”気にかける”ことだと思います。
そうすることで、自然な会話のなから「報連相」が生まれると思いました。
小さいことの声掛け一つにしても、メンバーを気にかけることが、相談しやすい環境作りになると思います。
この辺は心理的安全性にもつながると思いました。
チームビルディングで必要だと感じたこと
従来の臨床業務と違い、病棟制にはデメリットもありました。
各病棟別で少数のメンバーを形成しましたので、各病棟の状況が分かりにくくなりました。
特に病棟制になった当初はなおさら、OT部門内でも臨床業務に関するコミュニケーションは取りにくかった印象です。
これまでのコミュニケーションは、どちらかというと縦割りの「機能的構造」でした。
トップからの指示があり、中央集権的な意思決定がなされていましたが、
病棟制になってからは、意思決定にも多くのスタッフが参加するようになり、
病棟リーダーとしてそれぞれが責任を持つ、「有機的構造」となりました。
そして当時、大事にしたことは病棟リーダーの集まりの機会を「少数頻回」に設けることでした。
それぞれの病棟リーダーが受け持ち患者の状況やメンバーの情報、また業務成績のことに関して、
リーダー間で共有することで、OTメンバーの配置転換を再考したり、
患者さんの持ち数の比重を調整したりと、こまめに相談したことが良かったと感じました。
このときに、必要に感じたマネジメントスキルが、
・コミュニケーションの停滞を”危機感”として察すること
・各病棟リーダーに早急に呼びかけし発信できること
・ミーティングの場で、目標(ビジョン)を提示できること
・みんなの意思を1つの方向に導くファシリテートできること
このマネジメントスキルを、、
リーダーとしての役割、そしてマネジャーとしての役割を理解し果たすことが大事であったと感じました。
リハビリ業務のマネジメントといえど、、
危機感を察知し、周囲に発信し、明確なビジョンとして提示できるスタッフは
→リーダーです。
全体を俯瞰的にみて、業務の調整を図り、みんなをファシリテートできるスタッフは
→マネジャーです。
今やリハビリスタッフも専門業務だけに留まらず、
リハビ室として、部署や部門の運営などのマネジメントスキルが求められる時代ですね。
この辺は、なかなか養成校では学ぶことはなかったです。
ですから、経験的に行っているベテランセラピストがいることも事実ですし、
コロナ禍の激動の時代ですので、経験ではうまくいかないこともこれまた事実です笑。
だからこそ、僕らリハビリスタッフもマネジメントを勉強する必要があると感じました。
リーダーとは何か?マネジャーとはどういう存在なのか?
という、それぞれの役割や考えを示した書籍になります。
僕はどちらかとマネジャータイプですので、仕事でのマインドを学びました。
こちらは、リハビリ部署における、様々な事象をマネジメントの観点から
課題に対してアプローチを示した書籍です。
組織が大きくなればなるほど、細かいところでの意思疎通は図りにくくなる中で、
リハビリスタッフのそれぞれの役割を明確化して、風通しが良い職場を構築するための
ヒントが多く記載されています。