第2回「ちゅら島の移動を考える会」合同研修会レポート② 実車評価の「困りごと」を共有して見えてきたこと
実車評価のリアルに迫る
前回のレポート①では、
OTから免許センターへ届けた**“リアルな質問”と、
それに応える形で行われた道路交通法・安全運転相談の講義**を中心にまとめました。
今回のレポート②では、午前後半〜午後にかけて行われた
- 自動車学校からの事例共有
- 「実車評価での困りごと」をテーマにしたグループディスカッション
さらに、その後に行ったオンライン振り返りミーティングも踏まえて、
「実車評価の現場で、いま何が起きているのか?」
「OT・自動車学校・免許センターの連携は、どこまで見えてきたのか?」
をお伝えしていきます。
自動車学校からの事例共有:補助装置と“条件なし復帰”の間で
午前の後半では、津嘉山・名護それぞれの自動車学校から、
日頃の実車評価の中で印象に残ったケースや、現場で悩んでいるポイントが共有されました。
個々の症例の詳細は守秘の観点からここでは触れませんが、
テーマとしては次のようなポイントが挙がっていました。
- 身体機能に障害を抱えた方への運転再開支援
- ハンドルノブなど補助装置を使う/使わないときの判断の難しさ
- 評価時間が限られる中で、どこまで確認できるかという悩み
- 対象者が必要以上に「試験」と感じないようにする声かけの工夫
とくに津嘉山自動車学校の指導員からは、
「安全面を考えると、補助装置はなるべくつけたほうが良いのではないか?」という迷いがあり、
今回の研修で免許課(公安委員会)の考え方を直接聞けたことが大きかった、という振り返りがありました。
公安委員会としては、
「可能であれば、条件なしでの復帰が望ましい」
というスタンスがありつつも、
実車評価の結果を踏まえて本当に必要な場合には補助装置を条件に加える、
という方向性が共有されました。
「補助装置は“最初からつけておくもの”ではなく、
実車評価の結果を踏まえて“一緒に検討していくもの”」
この考え方を、医療側と自動車学校側が同じテーブルで確認できたのは、
今回の研修会ならではの収穫だったと感じています。
グループディスカッション
「訓練」から「評価」へ、役割を言語化する
事例共有のあとは、
医療職・自動車学校・免許センターが混ざった少人数グループに分かれて、
「実車評価で困っていること」
をテーマに対話を行いました。
議事録を整理すると、議論の軸は大きく次の4つに分けられます。
1.「訓練 → 評価」への転換と役割明確化
立ち上げ当初は、自動車学校側で**100時間に及ぶ実車“訓練”**を行っていたケースもあったそうです(特殊な事例として)。
しかし現在は、
- 病院での評価・リハビリ
- 自動車学校での実車評価
- 免許センターでの安全運転相談
という流れが整理され、
「どこまでが医療の役割で、どこからが自動車学校・公安の役割か?」
を話し合いながら、“訓練”よりも“評価と連携”に重心を置くスタイルへとシフトしてきています。
「運転を教える」から
「運転の可否や条件を、一緒に評価して考える」へ
スタンスが変わってきていることを、
改めて言葉にできた時間でした。
2.連携シート/実車評価用紙の運用課題
次に話題になったのは、
連携シートや実車評価用紙をどう運用していくかという点です。
- 病院から自動車学校へ渡す情報が十分か?
- 実車評価の結果が、どこまで病院にフィードバックされているか?
- 「診断書+一言コメント」で終わってしまっていないか?
といった課題が挙がり、
「紙切れ1枚で終わらせず、
そこから対話が始まるような運用にしていきたいよね」
という声が多く聞かれました。
3.広報と“未参加の施設”の巻き込みへ
ちゅら島の移動を考える会が立ち上がってから数年が経ち、
連携の土台は少しずつ整ってきています。
その一方で、まだ
- 連携の取り組みを知らない医療機関
- 実車評価には対応しているが、この会には参加していない自動車学校
もあるのが現状です。
そこで今後は、SNSやメディアを通じた広報や、
未参加の施設(医療と自動車学校)をどう巻き込んでいくかも、重要なテーマとして挙がりました。
4.人材育成と“仕組み化”
最後に、
「今のメンバーが入れ替わっても続く仕組みをどう作るか?」という話にも広がりました。
- 実車評価に対応できる指導員を増やすための校内勉強会。
- OT側でも、運転支援に関わる人材育成の仕組みが必要であること。
「人が変わっても、取り組みは続く」
そんな状態を目指して、
“人”に依存しすぎない仕組みづくりが、これからの課題として共有されました。
その後のオンライン振り返りミーティングで見えてきたこと
合同研修会から少し時間をおいて、
自動車学校の指導員と運転外出サポート班のOTメンバーで、
Zoomによる振り返りミーティングを行いました。
ここでは、研修会当日だけでは見えなかった「続きのストーリー」がいくつも語られました。
1.OT側の学びと、他職種への広がり
OTからは、
- 法制度についての学びが深まったこと
- 多職種連携として繋がりができたこと
- 言語聴覚士や運転に関わる医師など、他職種にもぜひ参加してほしいこと
などの感想が出ました。
「立ち上げの話を聞けたことで、
この会を続けていく意義を改めて感じた」
という声もあり、
“ちゅら島会”が単発のイベントではなく、
継続するプラットフォームとして育ってきていることが実感されました。
2.津嘉山自動車学校:補助装置の考え方が整理された
津嘉山自動車学校の指導員からは、
「安全面を考慮して、補助装置はつけた方が良いと考えていたが、
なるべく条件なしで復帰する方向性を共有できたのが良かった」
というコメントがありました。
一方で、
「実車評価の結果として、補助装置が必要だと判断されるケースでは、
こちらからその旨を提案していけることも確認できた」
とも語られ、
**「条件なし復帰」と「補助装置による支援」**のバランスが、
実務レベルで整理されてきた印象があります。
また今後、この関係性を継続していくためには、
新しく関わるメンバーに対しても取り組みの意義を伝え続けることが大切だ、という点も共有されました。
3.名護自動車学校:医師との対話の価値
名護自動車学校の指導員からは、
「専門の医師と公安委員会免許課担当者とのディスカッションが、
自分たちの“モヤモヤ”を解消してくれる場になった」
という感想がありました。
今後は、
- 運転支援に関わる医師の参加がもっと増えること
- 医療側の判断プロセスを、教習所側も学べる場が続いていくこと
を期待している、とのことでした。
4.“手順を踏まずに運転再開してしまう”という現実
自動車学校からは、こんな事例も報告されました。
- 二種免許(タクシードライバー)の方が、
自分で運転して実車評価に来校していた - 免許自体は有効期限内だが、本来であれば
評価・支援・安全運転相談を経て再開するのが望ましい
このケースはまだ「実車評価を受けよう」という意識がある分、良いほうかもしれません。
一方で、世の中には病識が乏しく、公的な手順を踏まずに運転再開している人も少なくないだろう――
そんな危機感も共有されました。
運転支援に関する同意書や手順については、
各病院の責任範囲や倫理委員会の考え方が異なり、
県内で統一するのは難しい現状があります。
だからこそ、
「制度的な理解を深めつつ、OT県士会としても啓発を進めていく必要がある」
という方向性で、今後の宿題が見えてきました。
来年度に向けて見えてきた「次の一歩」
オンラインミーティングでは、
来年度以降の活動計画についても具体的なアイデアが出ました。
名護自動車学校を会場にした研修会案
- 名護自動車学校を会場に、校内コースだけでなく路上評価も含めた研修を検討
- 症状に合わせたコース設定や、目的に合った路上評価の内容を体験しながら学ぶ
- ドライブレコーダーを活用して、評価中の映像データ(SD)を院内に持ち帰り、
フィードバックに活かす流れを一緒に考えていきたい
OTにとっても、「路上評価」を自分ごととして考える良い機会になりそうです。
テーマ別パッケージ化と、県外とのつながり
研修テーマについても、
- 連携編
- 症例検討編
- 法令編
- 新人編
といったパッケージ化の案が出ており、
他県で先進的に取り組んでいる事例を紹介する講義も検討されています。
全国の自動車学校の「運転復帰支援マニュアル」に関わった方を、
オブザーバーとしてお招きする構想も出ていました。
高次脳機能障害の新法と、当事者の声
また、
- 高次脳機能障害に関する新法が成立したこと
- 沖縄県の高次脳機能拠点の普及事業として、
失語症となった方が当事者として参加できる可能性
なども話題になりました。
“制度”と“当事者の声”の両方を取り入れながら、
沖縄らしい運転支援の形を探っていく——
そんな次のステップが見えています。
おわりに:評価はゴールではなく、対話のきっかけ
今回のレポート②では、
- 自動車学校からの事例共有
- 実車評価に関するグループディスカッション
- その後のオンライン振り返りミーティング
を通して見えてきた「実車評価のいま」を整理してみました。
改めて感じるのは、
実車評価は、合否を決める“試験”ではなく、
本人・家族・医療・自動車学校・免許センターが
一緒に「これからの運転」を考えるための“対話のきっかけ”だということ
です。
その対話を支えるためには、
- OTが検査結果を整理して言葉にすること
- 自動車学校が実車の様子を具体的にフィードバックしてくれること
- 免許センターが法令と安全の観点から最終判断をしてくれること
そして何より、
「よく分からないから、とりあえず自己判断で運転再開する」
人を減らすための、地道な啓発と仕組みづくりが欠かせません。
次回のレポート③では、
ちゅら島の移動を考える会のこれまでの歴史と、
今回の研修・振り返りを通して見えてきた今後のビジョンについてまとめていきます。


