「チーム医療」と叫ばれている昨今ですが、病院でも地域でも医療を取り巻く環境はかなり複雑です。
そんでもって いろんな専門職といろんな事情を抱えた対象者(患者さん)とその家族、社会背景とやらは、それはそれは多種多様です。
それでもどうにかして、チームをまとめて一貫した方針で、でも柔軟に、
というなんとも難しい会議こそが、医療業界独特の「カンファレンス」です!
そんな、カンファレンスにおける重要な司会進行役に今回はフォーカスを当てます。
つまりファシリテーションです
そのファシリテーションの重要性や考え方、実践方法を記載していきます~
そもそもファシリテーションとは?
ファシリテーション(Facilitation)を直訳すると、
「促進する」「容易にする」「円滑にする」という意味があります。
会議やカンファレンスにおいて、これらの役割を担う司会進行役をファシリテーターと呼びます。
もしかしたらリハビリスタッフがイメージする「ファシリテーション」とは、
脳卒中リハビリでの「神経筋促通法」などの手技テクニックを想像するかもしれません。
でも、今回はカンファレンスのおけるファシリテーションです笑
患者さんの病態や症状の変化があり、様々な社会背景を考慮したチーム医療においては、
チームが学び、変化し、動き出すまでのスピードが鍵になってきます。
つまり、カンファレンスでは「決まるべきことが明確」「時間効率がよく」「意見の対立を収めて」「それぞれの役割が確実に実行できる」ことを支援できる手法こそが、ファシリテーションの極意でしょう。
まさに、言うは易く行うは難し。。。
ファシリテーションの5つのスキル
カンファレンスでは他職種が集まり、双方向での話し合いが行われますので、
ここでは5つのファシリテーションスキルを記載します。
①論点を定める
そもそもの会議の目的を参加者が知り臨む必要があります。「今何のために、何を目指して会議を行うのか?」という事前情報を共有されていることです。
ですが、それだけでなく、例えば、リハビリ室の単位数(売上利益)が減少している課題があり、単位数を伸ばす目標を立てた場合は、、
「なぜ単位数が減少したのか?」と「単位数を上げるためにはどうしらた良いのか?」とでは会議の論点が異なります。つまり、会議の論点を定め、問題解決に向けた話し合いの流れを作るスキルが必要です。
②雰囲気を作る
カンファレンスの参加するスタッフには医師や看護師もいたり、経験年数も様々ですから、立場上として発言しにくい雰囲気はあります。その際は、小さい3~4名ほどのグループに分けたり、机の配置を「ロの字型」にせず、視点が一箇所に集めやすいように環境をレイアウトしたり、特定の人物に意見が偏らないように、別け隔てなく話を振ったりなどです。
またちょっと先生がトゲを刺すような言葉や高圧的な態度でも、
→「まぁまぁ そうなんですね~」とか。柔らかいトーンでファシリテーター自らが緩衝役となり、心理的な安全性を雰囲気として醸し出すことも大切です。
③参加者の意見を傾聴する
人の話をきくと言ってもいろんな「キク」がありますが、
「聞く、聴く、訊く」その中でも「傾聴力」こそがファシリテーションの要だったりします。それは「目」と「耳」と「心」をフル回転して発言者の話を「聴く」ことです!
つまり、ファシリテーターは自分が出しゃばらず、いかに参加者の言葉を受け止め、議論を展開させていくことが重要です。
④思考を広げる
医療従事者あるあるですが、「~に違いない」「~であるべきだ」などという経験則や固定概念がありますので経験年数が上がるにつれて思考が凝り固まりやすいです。
なのでファシリテーターの質問としては、
「例えばどのようなことでしょうか?」とか、「具体的に言うとどうでしょう?」、「その発言の意図は何でしょう?」といったことを投げかけたり、
「そもそも〇〇ってどういう意味ですか?」というブレインストーミング的に質問を広げて参加者の思考を発散させていきます。
⑤共通の目標をみつける
多くの意見が集まったら、次に共通点を見つけ整理する要約力も大事です。参加者が多ければ多いほど、ほとんどの場合、意見が一致することはないです。そのため、参加メンバーに対して論点を再確認させて納得感が得られるように意見の本質を提示します。
ファシリテーターのココロエ
ファシリテーターとは、「カンファレンスでの対話を促進させる者」という意味があります。そして次のような姿勢(心得)が求められます~
①参加メンバーを尊重する
②どのような意見も否定せず一つの考えとして受け入れる
③意見が対立した場合もそこから新たな発見がないか引き出す
④常に中立的な立場で公平にメンバーと接する
⑤メンバーの意見が出ないときは代弁することもあるが、メンバーに解決を委ね信じること
こういったポジティブな姿勢がファシリテーションを円滑にしてくれます。
トータルで考えると、そのカンファレンスを任せてもらえる人物の
「人望」、「大局観」、「熱意」、「ユーモア」、「リーダーシップ」など
「何を」言うかではなく、「誰が」言うか。
という総合的な人間力が大事かもしれませんね。
この辺はすぐにできる事ではなく、普段の業務態度から信頼を得る姿勢が大切と思います。
いざ!実践してみよう!
ここまで、ファシリテーターのスキルやカンファレンスを進めるにあたっての心得を記載してきました。
ここでは、実際に僕が症例検討会やカンファレンスで活用しているスキルや方法を紹介します。
まずは、兎にも角にも事前準備が大事です。
参加するメンバーの特性を把握しておき、議論のテーマでKeyManを抑えておくこともポイントです。
例えば、脳卒中リハビリだと〇〇さん!心リハだと〇〇さんへ。呼吸リハビリだと〇〇さんに話を伺おう!っと言うふうにディスカッションの流れで着地点に差し掛かってきたタイミングで話をKeyManに振ることもあります~
また、傾聴力でも少し触れましたが、議論中では「発言者は何を一番に伝えたいのか?」と感じ取ることが大事です。
また、話が止まらない参加者がいた場合は、発言の中でよく出現する言葉をマークすること。話が長い場合は、「つまり〇〇ってことですか?」と、要約して他の参加者へ理解を共有してみる。そしてその要約が発言者の意図と合致しているか確認をとり、違う時は修正することもあります。
これもたまにありますが、論点と関係ない内容の発言があれば、触れずにスルーしトーンダウンしつつ、ファシリテーターに視線を送ってくれている別の参加者へ話を戻し軌道修正を行うこともあります。
ここまで、そんな偉そうなことを言ってますが、最初は全然ダメでしたよ笑
実際はいろんなカンファレンスでファシリテーターのチャンスをいただき、場数をこなすことで実践感覚が身につきました。
僕自身、何回もトライ・アンド・エラーを繰り返して、徐々に慣れてきた感じはします。
そうする事で、ファシリテーターが動じることなくドシッと構える事で、カンファレンスが安定していく感が、今ではあります~
カンファレンスでおこる他職種と多職種のはざまで。。。
「マネジメントの父」と称されたP・F・ドラッカーは、
「病院ほど専門性が高い人材が集まる企業はない」と語っています。
それほど、各スタッフが何かしらの専門的な国家資格を有しています。なので細分化された専門的な立場をまとめるのは、それはそれは複雑です。
そのため、カンファレンスで意識していることが、
その場で答えを見つけるのではなく、方向性を定めること。
「問題の解き方」よりも。。。
「そもそもの問題は何か?」と患者さんの抱えている課題を見極めることが大切になります。
そして、役割の再確認。それがチーム医療につながってくると考えます。
チームが同じ目標に向かって機能的に動けるように、
「患者さんの抱える問題はみんなの力を合わせて解決していこう!」と熱意も持って働きかけていくことですね。
どの専門職にも得意・不得意がありますし、他職種にも興味を持って相互理解をすることから始まります。
結局はカルテだけのやり取りや院内電話(PHS)だけのコミュニケーションではなくて、
「顔を合わせて話し合いをする」関係性が重要かなと思います。
つまり顔の利く存在を目指して。
カンファレンスの舵取り役を務めるファシリテーターは他職種の専門領域に興味を持ち、日頃から積極的にコミュニケーションを取ることが、やはり一番の近道(だけど地道)かもしれませんね。
今回参考にした書籍です~