2025年9月21日(日)、九州作業療法士会主催の「運転と移動支援研修会」がオンラインで開催されました。
九州各県から運転支援に携わる作業療法士が集まり、日頃の取り組みや課題、そして今後の連携について意見を交わしました。
この会は、九州全体で「運転・移動支援に関わるOTの知見と実践を共有し、支援の質を高めること」を目指して立ち上がったチームの取り組みの一環です。
九州という広いエリアを超えて、それぞれの県の強みを持ち寄り、“つながる力”を感じられる時間となりました。
始まりは「つながりたい」という想いから
九州運転支援チームの始まりは、2023年12月に開催された
「運転と地域移動に関する都道府県士会協力者会議」(日本作業療法士協会主催)での出来事でした。
ZOOMのブレイクアウトルームで、たまたま集まった九州ブロック(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)のOT代表者のメンバー。
約1時間という限られた時間でしたが、画面越しに交わされた意見はどれも熱く、
「各県でどんな運転支援をしているのか」
「地域での移動支援はどう展開しているのか」
と、あっという間に時間が過ぎていきました。

そのとき、鹿児島県のOT西さんからの呼びかけがすべての始まりでした笑
「九州のメンバーで、もう少し継続的に情報共有していきませんか?」
この呼びかけに、各県の協力者がすぐに賛同。
「ブロックごとの報告だけではもったいない」
「せっかくつながれたのだから、九州として協力し合いたい」
そんな声が自然と広がり、オンライン上で“九州チーム”が生まれました。
背景には、各県でバラバラに進んでいた取り組みを「つなげたい」という共通の思いがありました。
運転支援に力を入れる県もあれば、これから体制を整えようとする県もある。
その温度差こそが、学び合いと支え合いの土壌になる――そんな予感に包まれた瞬間でした。
その後、鹿児島の西さんが中心となり、最初の九州合同ミーティングを開催。
九州各県の取り組みをスライドで共有し、今後の方向性を語り合う時間が生まれました。
ここから少しずつ、「九州運転支援チーム」としての絆と活動が育っていきます。
チームの目的と理念
翌年、正式に**「九州作業療法士会 運転と地域移動支援チーム」**が発足。
その理念は、「つながりを力に変える」こと。
九州という広域エリアの中で、各県が孤立せず支え合うために、以下の4つを目的に掲げています。
- 運転・移動支援のノウハウ共有
- 九州版「運転支援ヒント集」の作成
- 九州全体での相談・情報ネットワークづくり
- 会員同士が育ち合う研修文化の醸成
“運転を再開する”ことをゴールにせず、
「移動すること」そのものを支援し、生活の再スタートを支える。
そんな作業療法の価値を、九州全体で広げていくことを目指しています。
積み重ねてきた九州の対話
2024年度からは、定期的にオンライン会議が行われ、
各県の進捗報告・評価方法の共有・連携事例の整理など、地道な活動が重ねられてきました。
その内容としては、、、
- 評価基準の共通化に向けた意見交換
- 教習所・公安委員会との連携方法の共有
- 各県発のパンフレット・マニュアルづくり
- 九州版ヒント集の構想
少しずつ形になり、「九州でひとつの動き」としてまとまりつつあります。
そして、2025年度は、「運転と移動支援に関する研修会」の開催に向けた議論が本格化!
福岡・鹿児島・宮崎・沖縄では、すでにパンフレット化や自動車教習所との協定締結が進んでいる県もありました。
まずは、現状の自分たちが取り組んでいる運転や移動支援に関する情報共有を目指して、研修会開催の準備をしました。

また、会議では「OTとしての運転支援のやりがい」「声掛け・倫理的配慮」など、
現場のリアルな視点も大切にされており、九州全体が“学び合う共同体”として機能し始めています。
九州OTの運転支援がひとつになる日!オンライン研修会の開催
これまでの積み重ねの成果として開催されたのが、今回の研修会です。
福岡から沖縄まで、8県の代表がそれぞれの取り組みを発表しました!
内容を簡単にまとめるとこんな感じです。
県 | 主な取り組み内容 |
---|---|
福岡 | 医療・教習所・県警との連携による評価基準統一 |
佐賀 | 高次脳機能障害支援機関との協働による実態把握 |
長崎 | 地域ブロックでの情報交換・アップデート研修 |
熊本 | 教習所との協定締結・実車評価マッチングの推進 |
大分 | 指定教習所へのアンケート・協働体制の模索 |
宮崎 | 宮崎モデルとして評価統一・実車研修・協定化 |
鹿児島 | 公安・教習所・医療の三者連携モデルを運用 |
沖縄 | 「ちゅら島の移動を考える会」による実践型合同研修 |
各県の発表には、地域の特色と創意工夫がにじみ、
「違い」を共有することの価値を実感する内容となりました。
九州から全国へ。そして、再び九州・沖縄へ
九州で育まれたこの動きは、いよいよ全国へと広がろうとしています。
2025年12月には、日本作業療法士協会主催「全国協力者会議」 が開催予定です。
この会議では、全国47都道府県の作業療法士協会の代表者が集まり、
運転と地域移動支援に関する現状と課題、そして各地域の取り組みを共有します。
九州からは、これまでの1年間で積み上げてきた成果を報告予定。
各県の連携の進み方や、研修会の開催・ヒント集の制作など、
「九州全体で支え合うチームの形」を全国に発信する大切な機会となります。
特に注目されているのは、宮崎県作業療法士会による県事業との連携報告(全国プログラム内にも掲載)と、
九州ブロック全体の活動報告です。
ここでの発表を通じて、「地域発・現場発のOTネットワーク」が全国に広がることが期待されています。
そしてさらに、2026年には、
「九州作業療法学会(開催地:沖縄)」 が控えています。

ここでは、九州運転支援チームとしての初の現地企画を構想中です。
内容はまだ検討段階ですが、
- シンポジウム(各県代表による運転支援の実践報告)
- パネルディスカッション(制度・評価・連携をテーマに)
- 情報共有ブース(九州版ヒント集・研修会紹介など)
といった形式で、「九州の実践を見える形に」 発信していく予定です。
これまでオンライン中心だった交流が、ついにリアルの場で一堂に会する瞬間。
九州チームの温かいネットワークが、そのまま沖縄の青い空の下に集う——
そんな未来が少しずつ近づいています。
次の一歩は、「つながりを形にする」こと。
九州から始まった運転・移動支援の輪が、
全国のOTたちの心をつなぐ輪へと広がっていくことを願っています。