前回の記事では、実車評価の適応となる患者さんの基準と症例の紹介を記載しました。
そして、今回の記事は、自動車教習所に担当療法士も同行しましたので、
その実車評価の内容や雰囲気、そして実車評価を終えたあとの手続きのあれこれを記載しました!
いざ自動車教習所へ!!
初期評価と比べて、高次脳機能症状が改善したことと、ADLが完全自立していることなどを総合的に鑑みて、主治医へ実車評価が適応となることを相談しました。
そして、主治医の許可を頂いて、前記事の手順通りに実車評価へと進めていきました。
今回、伺った自動車教習所は沖縄県の中部にある自動車学校です。
ちなみに、僕たち沖縄県作業療法士会の運転外出サポート班が把握している、県内で高次脳機能障害の患者さんの実車評価を受け入れている自動車教習所は、、、
南部に1校、中部に3校、北部に1校です。
石垣島や宮古島などの離島にまだ支援が広がっていないのも今の運転外出サポート班の課題ですね。
そして、中部の3校のうち、1校は担当療法士の同行が必須となっています。
今回、実車評価を行った自動車教習所の大まかな特徴としては下記の感じです。
・3時間の教習(構内と路上評価)
・事前の1週間前にFAXで情報提供(運転サマリー)が必要
・家族の同行必須
・リハビリスタッフの同行必須
・料金は1万2千円
・実車評価後は各病院が用意する実車技能用紙に記載
→本人、家族、リハスタッフが同時にフィードバックを受ける
実際の実車評価の様子や雰囲気
まずは、自動車教習所についたら、料金を前払いします。
費用は家族負担となっています。
その後に担当療法士と自動車教習所の担当教官との名刺交換や挨拶などがありました。
今回は作業療法士の僕と担当の言語聴覚士の後輩も一緒です。
そして、実車評価前のオリエンテーションを行います。
患者さんの高次脳症状に合わせたコース設定の説明や確認したい運転評価などを、教官員と担当療法士、そして患者さんとて打ち合わせします。
順調に進めば路上評価も行いますので、事前に運転免許証も確認します。
実車評価を行う自動車に乗る前に、患者さんにとっては普段乗り慣れていない自動車ですので、教官員から事前に自動車の特徴などのレクチャー受けます。
車体の大きさや運転席から見える後方や側方の様子などを丁寧に説明を受けています。
その後も、いきなり患者さんが運転するのではなく、指導教官員から構内のデモンストレーションを受けます。
かなり時間をかけて丁寧に進めていると感じました!
こんな感じで構内を案内しながら構内コースの特徴や今回の実車評価となる課題などを伝えています。
そしていよいよ実車評価がスタートします!!
ミラーやシートの調整から運転技能が始まります。
構内での実車評価では、「カーブでスピードを20km以下に落としましょう」など、いろいろと注意事項を伝えられながらも、いかに言われた内容は理解して実行できているか?なども評価となります。
その後はコースの中に入っていきま!
構内コースでは外周と内側コースに分けれており、
内側コースでは、、
・乗り上げアクセル→ブレーキ踏み変え確認
・S字クランク
・縦列駐車
などなどを確認していきます。
より実践となる路上評価へ
そうして、構内での実車評価で合格となれば、、、
今度はいよいよ路上での実車評価へ移ります!
その時の患者さんは、もう緊張していましたし、僕らリハビリスタッフも緊張していたのを覚えています笑
実際の路上評価では、構内評価とは違って、、、
・対向車、走行車の存在
・標識の数や種類の多さ
・歩行者、自転車の存在
・信号機の移り変わり
などなど、いろんなところに注意機能や視空間認識を発揮しなければなりません。
また、教官からは道順の指示を受けますので、その指示通りに走行しなければならないという、マルチタスクも発揮しなければならない状況です。
改めて自動車運転というのは、かなりの高次な脳機能を司る作業だと実感しました!
この時は雨が降っていて、条件は悪かったですね笑
そして、このような車通りの多い市街地も走行しました。
そんなこんなで、大きなミスもなく症例は無事に路上評価を終えてました。
所要時間としては、構内評価が70分、路上評価が60分の実車評価となりました。
そして、自動車教習所に戻り、交通安全に関する啓蒙活動の動画を視聴します。
その間、担当教官員は実車評価 運転技能用紙を作成しています。
実車評価を終えて。そしてその後の手続き
実車評価のあとは、担当の教官員から運転技能のフィードバックを患者さん本人と家族、そして僕らリハビリスタッフも受けます。
こんな感じで、実車評価 運転技能チェックシートに従って、注意が必要なところや良かった点などが伝えられます。
そして、実車評価を終えたら、その後の手続きとして当院では下記の通りです。
・運転評価結果を主治医へ報告
・公安用の診断書作成が必要な旨を伝える
・診断書は本人or家族が準備する
・本人もしくは家族から、診断書を医事課文書受付へ提出
・後日、主治医にて記載し本人or家族が受け取る
・公安の臨時適性相談を受ける
こうして、今回 実車評価を行った症例さんは無事に公安委員会(運転免許センターなど)の臨時運転適性相談を行い、無事に公的な手続きを踏まえて、運転再開となりました!!!
まとめ
脳卒中後の運転許可の法的権限(判断)は公安委員会(免許センターなど)です
僕らリハビリスタッフとしては、自動車運転に関わる機能評価を行いましょう!
そして、実車評価を進めるにあたっては、自動車教習所の教官にわかりやすく高次脳機能症状を説明しましょう!(実車評価中に、今のは高次脳機能症状ですか?と聞かれます。)
今回は机上の高次脳機能検査だけでは、判断しきれないグレーゾーンの症例を通して、実車評価の実際を記事にしました!
まだまだ、県内では実車評価を受け入れている自動車教習所は少ないですが、全国的には運転支援のゴールドスタンダードは実車評価と言われています。
そのゴールドスタンダードに沿って僕たちリハビリスタッフが自動車運転支援を行えるためにも、まずは目の前の症例さんに真摯に向き合って取り組んでいきましょう!