普段は急性期総合病院のリハビリテーションで作業療法士として勤務していますが、その一方で沖縄県作業療法士会(職能団体)で、運転外出サポート班という、自動車運転支援に特化したワーキンググループのリーダーをしています!
この運転外出サポート班というのは、過去に熱意を持って立ち上げた諸先輩方から引き継いだワーキンググループなんですね。
それは過去記事をご覧ください~
そんな運転支援の有志メンバーである作業療法士と障がい者の実車評価に尽力されている自動車学校との連絡協議会である、、、
「ちゅら島の移動を考える会」の始まりについて記載しました!
実車評価がゴールドスタンダードである
脳卒中を発症したあと、身体機能や高次脳機能の改善を図り、ADLが自立していく過程を支援することがリハビリテーションの仕事です。
その中でも社会復帰や退院後の役割の再獲得、趣味の継続などで自動車運転は非常にQOLと密接に関わってきます。
これまでの運転支援は、病院内での身体機能や高次脳機能検査で評価して、運転再開に関しては、かなり曖昧なまま自宅退院するケースが多かったと思います。
ですが、僕たち作業療法士は患者さんのニーズに応えるべく、適切な知識とマネジメントを発揮して運転再開の支援を行う必要性があります。
現在、日本作業療法士協会や日本安全運転医療学会などが提唱している支援に、、
自動車学校での実車評価をゴールドスタンダードとしています!
日本作業療法士協会 「押さえておきたい!運転再開支援の基礎」
机上の高次脳機能検査やADL場面では見られない、より高度な運転操作という作業においては、自動車学校での実車評価は重要になってきます。
何故かというと、実車評価を行うことで、自動車運転に必要な認知、予測、判断、操作の運転能力を実践場面から評価できるからです!
認知:周囲の状況を把握すること
予測:もしかしたら〇〇があるかもしれない
判断:止まるや進む、スピードを落とすなど
操作:アクセルやブレーキ、ハンドルなど
より適切な手順を踏むことで、安全な運転支援から公的な手続きまでを作業療法士がリードしてアプローチしていくことが、これから求められると思います。
これまでの自動車学校との連携は?
運転支援に自動車学校での実車評価が重要だと分かっていても、
その実車評価を受け入れてくれる自動車学校が当時(2017年あたり)は、あることはあったのですが、大々的に表明はしていませんでした。
そして、実車評価を受け入れてくれている自動車学校の数も少なかったです。
それはなぜか???
僕ら医療機関と違い、自動車学校は会社であり利益追求があたりまで、その収益は運転免許取得を目指している学生層がメインターゲットだからです
しかも、高次脳機能障害という目に見えない症状は一般的な知識では対応が難しく、どうしたらいいのかわからない。
というのが当時、沖縄県作業療法士会が調査したアンケート結果でわかりました!
また、この高次脳機能障害者の実車評価の受け入れや料金プランに関しても、自動車学校の経営者の意向が反映されているとのことでした。
そんな中で、沖縄県作業療法士会の特設委員会であった「沖縄の移動を考える作業療法委員会」の初代委員長の先輩作業療法士が、、、
県内の各自動車学校へ、
・実車評価受け入れ可否の電話連絡をしたり
・高次脳機能障害に関するハンドブックを配り、あいさつ回りしたり
・自動車学校の経営者に説明に行ったりと、
とても運転支援に関する啓蒙活動を尽力されました。
そして、ちゅら島の移動を考える会が発足した!!
そんな沖縄の移動を考える作業療法委員会の委員長やメンバーの尽力もあって、自動車学校の教習指導員と作業療法士との合同研修会を開催しました。
その研修会をきっかけに、県内の南部、中部、北部の各地域から運転支援に関する連携を図ってくれる自動車学校が名乗りを上げてくれました!
そして数回、関係者でミーティングを重ねる過程で会を結成することになりました。
それが、「ちゅら島の移動を考える会」です。
目的は「障がい者の運転支援に係る支援機関の連携を図る」こととしています。
これまでのちゅら島の移動を考える会の主な取り組みとしては、、、
①お互いが抱いている疑問を共有し、できるだけの解決を図り明確化していく
②医療と自動車教習所の現状を理解する
③中長期的なビジョンを描き、協力して実施していくべき方針を定める
④それぞれの専門性を高める
⑤その他関連機関(医療・自動車学校)の数や他領域の拡大について検討
これらを主軸に2019年からこれまで定期的に議論を重ね連携を図っています。
コロナ禍でも続けた連携
2019年に結成したちゅら島の移動を考える会ですが、、、
その翌年に新型コロナウイルス感染症によって一時的に連携が中断となります。。。
そして、各病院や自動車学校では、
感染対策として、、、
患者さんを院外に出すことは出来ない、また自動車学校でも実車評価の受け入れが出来ないなど様々な障壁がありました(大汗)
いやはや。。。
あの時は自分の職場もコロナのクラスターで、てんやわんやでしたし、色んなことが大変でした。。
それでも連携のあり方を模索して、オンライン会議を実施して会を継続しました。
そのオンライン会議では、、
・高次脳機能障害の勉強会や臨床で活用する評価ツールを紹介したり、
・実車評価から運転復帰に至った症例検討会をしたり
・実際の支援で疑問に感じることをそれぞれの専門職の目線からアドバイス・ディスカッションするなどしました。
今思えば、あのときの踏ん張りがあったからこそ、次の情報共有シートや対面での合同研修会につながったと思います。
諦めなくて本当に良かったと思います。
ついに完成した情報共有シート!!
病院と自動車学校との連携には、情報共有が欠かせません。
ですが、その情報共有の方法は各病院によってさまざまでした。
ある病院ではリハビリ紹介状のように記載したり、
ある病院では電話での口頭で伝えたり、
ある病院ではお手紙にして渡したり、
など各病院でバラバラであり、記載されている内容のボリュームや明快さ、必要なポイントなど様々で、実車評価を受け入れる自動車学校も困っていました(汗)
そこで、自動車学校と情報共有しやすいように沖縄県作業療法士協会推奨の情報共有シートを作成しよう!
という取り組みがはじまりました!
医療側からどのような情報があれば実車評価がしやすくなるのかを念頭におきながら、、
まずは、運転外出サポート班に参加している各病院の情報共有シートを比較しながら新しい情報共有シートを作成しました。
そして、ちゅら島の移動を考える会でのミーティングでは、その情報共有シートを自動車学校側で使用してみて、必要な情報項目の選択、内容の充実度、詳細な情報の箇所などなど、様々な意見をもらい参考にして、、、
ちゅら島の移動を考える会推奨版の情報共有シートが完成しました。
このシートが完成するまで、約2年を費やしました!!!
https://drive.google.com/file/d/14mTb8CUW-4GcCJXjTdAYryqc9I4_mqzJ/view?usp=sharing
ちゅら島の移動を考える会 推奨 情報共有シート
ようやく、僕たち作業療法士会 運転外出サポート班の連携が形になってきました!
この活動を通して感じることですが、、
運転支援に限らず、
僕たち、作業療法士の良さって、目の前の機能面やADLだけでなく、その先の未来も一緒に見てあげることができる医療職なのじゃないのかなぁ~と思っています。
次回は念願の自動車学校との合同での研修会!そして、運転免許センターの県警職員も参加した内容の記事を記載します!