2023年12月上旬に日本作業療法士協会主催の
「運転と地域移動に関する都道府県士会協力者会議」に沖縄県作業療法士会代表として参加しました~
2年に1度開催している全国協力者会議で、地方からの参加者の利便性を考慮してオンラインでの会議でした。
今回の記事は、その会議に参加したことで感じたOTの自動車運転~地域の移動支援の可能性やOTの役割に関する内容となっています。
運転支援に関するOTの変遷
まずこの「運転と地域移動に関する都道府県士会協力者会議」についてですが、
始まりは、2017年あたりで日本作業療法士協会の特設委員会であった、運転と作業療法委員会による調査会議がきっかけであったと伺っています。
このときが第1回の協力者会議となりました。
その時は自動車運転支援に関してOT個人レベルで活動はしていたものの、組織や職能団体としては本格的に取り組んではいませんでした。
そこから、調査会議を経て全国各地の運転に関する実施状況を把握した後に、
2019年に第2回の全国協力者会議が開催されました。このときはコロナ前でしたので、ひとつの会場に全国から運転支援に関わるOTが一同に介しました。
第2回目の全国協力者会議での関心事は、、、
・脳卒中発症後の高次脳機能障害の対象者に対しての運転支援
・自動車教習所との連携
・自施設へのドライビングシミュレーターの導入など
作業療法アプローチから自動車教習所との連携など、まだまだこれから取り組みべき支援課題が山積みでした(※ちなみに、僕は参加していなく、先輩からの伝達講習で聞きました笑)。
また、先駆的に行っていたのが岡山県で、沖縄県作業療法士会は前任の運転外出サポート班(旧:沖縄の移動を考える作業療法委員会)の委員長、副委員長、事務局長の3人で岡山県へ視察へ行き、病院と自動車教習所との連携のあり方などをモデルケースとして見学した経緯があります(※これも僕は参加していません笑)。
そして、2021年の第3回の全国協力者会議では、コロナ禍に突入していたのでオンラインを活用して会議を行いました。
このときには、各都道府県でさまざまな特色が出始めていました。
・支援の対象者が高次脳機能障害者だけでなく、軽度認知症や発達障害、脊髄損傷や切断など領域や範囲が拡大しつつあり
・運転免許センターと自動車教習所、医療機関が三位一体となって情報提供シートから診断書作成までをシームレスに連携する地域があったり
・関連機関と運転支援に関する協定書を結んでいる地域があったり、
・近畿では隣府県同士で運転支援に関する研修会を行ったり
などなど、運転支援に関するOTの支援の幅や他業種への連携が飛躍している印象でした。
運転だけでなく移動支援へのアプローチへ
そして、2023年の第4回協力者会議では全国の各都道府県OT士会で運転や地域での移動支援に関するチームの活動が活発になってきました。
特設委員会の運転と作業療法委員会が発足し、啓発活動を行って8年あまりで、各地域の運転や移動支援はレベルアップしている印象でした。
そして、運転支援を行っていく中で、対象者の高齢化や重度の後遺障害などで、
どうしても、運転再開を断念するケースはあります。
そんな時にOTとして、地域での移動支援へとフィールドを広げているOT都道府県士会もありました。
具体的には、、
・デマンドタクシーやコミュニティバスのロードマップを作成し配布
・市街地や駅周辺の障がい者専用駐車場や多目的トイレのマップの作成
・シニアカーや電動アシスト三輪車の購入に関する資料冊子を作成
・地域の介護予防教室、地域包括支援センターと連携。地域の移動に関する講習会を実施
などなど地域での活動と参加へ関わるOTとして、支援が広がっていく感じがしました。
OTが自動車学校へ就職⁉
一方で医療現場で運転支援を行うだけでなく、実際の教習指導員として転職したOTもいました。
そのOTの方は、、、
出生率の低下や18歳人口の減少等に伴い、全国の教習所数や卒業する教習生の数は年々減少している一方で、教習所が対象とする方の多様化が進んでいる現実も感じています。ここに、自動車運転支援領域への作業療法士参入の可能性を見出しています。
と発表されていました。
機関誌『日本作業療法士協会誌』2023年12月号 指定自動車教習所の作業療法士
また、、「医療および介護分野の手が届かない対象者への介入」を個人的なテーマとしており、新たな社会資源や移動支援の価値提供ができる可能性にやりがいを感じているとお話されていて、OTのキャリアデザインの一つとして感銘を受けました!
やはりルールは行政・警察である
自動車教習所で働くOTは、これからの新しいキャリアデザインの一つですが、
基本的には医療機関や介護、福祉に務めているOTがほとんどなんですね。
そんな、自動車運転支援を行う作業療法士として出来ることは大きく3つです。
1.運転機能に関わる身体機能、認知機能の評価をすること
2.医師が作成する診断書作成の一助になること
3.免許センターや自動車学校と連携を図ること
つまり、運転再開を希望する対象者に対して、
それぞれの関連機関が協力しあい安全な交通社会を目指す事が大切であり、三位一体となって取り組む必要があります。
しかし、あくまで運転可否の判断(ジャッチメント)は、公安委員会(免許センターなど)です。
そのためか、、、未だに関係性としては医療機関が起点となって、自動車学校で実車評価を依頼したり、対象者(患者さんなど)の運転機能の状態を把握した上で、免許センターに適正相談を促したりなど、、
運転機能の把握から臨時適性相談の案内まで、お膳立てをしているイメージです。
また、日本の制度上では、統一された運転再開の明確な基準はなく、
そして、各都道府県ごとに診断書の様式や適性検査、相談が実施されていて、その内容もさまざまです。
やはり、ルールは行政・警察(公安委員会)であり、
制度や法令に準じて僕らOTも運転支援を行いつつ、関連機関と連携を図る必要があります。
日本OT協会として目指す移動支援のビジョン
一方で日本作業療法士協会としては、運転と地域移動支援実践者制度を開始しました。
これは、作業療法士が運転支援や移動に関する知識、技術のレベル向上と社会的地位の確立を目指した認定制度です。
「運転と地域移動支援」の重点課題研修会を受講して、⾃動車運転と地域移動支援にかかわる学会発表や論文掲載を行った後に、
認定審査会や理事会を経て認定証が発行されるとのことです。
一般社団法人 日本作業療法士協会 【運転と地域移動推進班】
今現在、僕らが取り組んでいる運転や移動支援の活動が、今後さらに作業療法の存在価値を⾼めて、社会的に認知されていくためにも、この認定制度が設立されたことはかなり意義があり大事なことです。
そうやって⾼度な舵取りや交渉⼒など、マネジメントを発揮できるOTが貴重な存在として地域や社会に必要になると思います。