当院は急性期の総合病院でして、初期治療を終えれば退院もしくは、さまざまな後方医療施設への転院となります。
そのため、当院ではリハビリテーションにかける時間というのは、回復期リハビリ病院と比べると圧倒的に少ないんですね。。。
ですが、そんな当院でも運転支援として、教習所での実車評価を行うケースもあります。
そんな今回は、実車評価の適応となる患者さんの基準やその進め方を記事にしました!
実車評価の適応となる患者さんとは?
まずは当院の運転支援の流れと実車評価が適応となる患者さんの基準を記載します。
当院の運転支援の流れとしては、、、
対象の患者さんやご家族さんへオリエンテーションを行い、その後に当院で定めている運転機能に関する高次脳機能検査とADL評価を行います。
上記の記事は過去に運転評価の高次脳機能検査のカットオフ値やADL評価、運転支援の流れについて詳しく記載しています。
そして、評価結果をもとに主治医と相談をして、方向性を決めます。
このときの黄色の方向性となる患者さんが、とても微妙なラインです。
その時に、自動車教習所での実車評価へと進めていきますが、その際の基準としては、、
・高次脳機能検査がカットオフ値にギリギリ未達
・ADLは完全自立
・家族からの視点では、元々のキャラクターでもなさそう
上記のポイントが揃うと、、、
「実際に運転してみないと分からない」という状態になります。
実車評価への進め方・手順とは?
あくまでの当院のマニュアルに沿った手順です。
いち参考程度にしてくださいね!
実際の当院での実車評価の手順としては下記の通りです。
①自動車運転サポートチームへ相談
②部署長へ自動車教習所と連携を取る旨を報告
③実車評価が適応である旨を主治医へ報告
④患者さんと家族へ実車評価を提案し承諾を得る
⑤運転サポートチームリーダーにて自動車教習所と日程調整を実施
⑥日程が決まれば、患者さんへ連絡
⑦運転リハビリのサマリーを作成し自動車教習所へ発送(FAXか手渡し)
上記の手順は主に外来リハビリから、実車評価へ進める際の手順ですが、、、
入院中であれば、病棟師長への報告と外出許可の申請も必要です。
・患者さん本人の運転免許証が必要
・免許書に記載されている物品(眼鏡)
・運転しやすい服装(靴、私服)
・患者さんは家族車で移動
・スタッフは社用車で移動(同行する場合)
・実車評価に必要な費用は家族負担(約1万円前後)
実車評価へ繋いだ症例
最後に、当院で初めて実車評価に同行した症例を紹介します。
•60歳代 男性
•診断名:左頭頂葉皮質下出血
•社会背景:妻と娘家族との6名暮らし 仕事は観光関係
•身体機能:良好 運動麻痺や感覚障害なし
•高次脳機能:失語症状、注意、空間認知など全般低下
•ADL:歩行自立レベル
運動麻痺などの症状なく身体機能は良好でADLもすぐに歩行レベルへと移行しましたが、全般的な高次脳機能低下を認めました。
・MMSE:17点
・TMT-J:A174秒 B300秒
・コース立方体:6点(IQ 43)
レイの図検査 模写:6.5点
再生:不可
高次脳機能としては、特に全般的な注意機能低下や構成課題、視空間認識が低下していました。
なので、初期のリハビリの際は簡単な机上アクティビティで、ボックスパズルを行ってみても時間がかかったり、エラーが出現しました。
このときも、ボックスの形状に合わせたピースを選択することに苦慮しました。
また、訓練の一環として、車椅子を使用して、ご自身で駆動してもらいます。
そして、バック操作からの車庫入れをイメージした車椅子操作を行いました。
その際に必要な機能としては視空間認識や構成機能、注意機能が重要になってきます。
↑①麻痺は無いので両手での駆動が可能です
↑②個室(ST室)にバックで入ります
↑③広く周囲を目視することが乏しく、大きく左へ偏ってしまいます
↑④数回、切り返しをしながら、ようやくバックで個室へ入ります
↑⑤個室へバックから入れましたが、左のスペースは狭いです。
こんな感じで、当院での入院リハビリを約2~3週間ほど行った後に高次脳機能検査を再評価しました。
・MMSE:24点
・TMT-J:A90秒 B201秒
・レイの図検査
模写:34点
3分後再生:16点
経過に伴って、高次脳機能の再検査は全般的に改善を認めました。
注意機能検査(TMT-J)の基準は未達でしたが、
・ADLが完全自立していた事と
・家族のリハビリ見学からも元々のキャラクターでもなさそう
ということで、、、
実車評価の適応となり、実際に自動車教習所へと繋ぎました!!
続きはまた次回の記事にします!!