マネジメント

リハビリテーション部署のマネジメントの本質は「質の向上」にある

今年度からリハビリ部署の主任となり、曲がりなりにも筆頭主任で同年代の先輩OTと一緒に作業療法部門のマネジメントを担ってきたんですね。どうにかこうにか。

その中で感じる、役職者としての喜びや嬉しさ、一方で苦悩や大変さを感じながら今の僕の考えを記事にしました。

リハビリテーションという形に残らないサービス

リハビリの仕事は、他の業界、例えば製造業などと違って形に残らないサービスなんですね。

商品や作品を扱わない我々は、対患者との絶え間ないリハビリセッションがあり、それは個別性の高いオーダーメイドな関わりをしていく必要があるんですね。

なので、何を持って、このリハビリが正解なのか?は患者さんも家族さんも、もしかしたら対応しているリハビリスタッフも解らないことが大いにあります。

もちろん、現在の医学ではガイドラインがありますので、推奨されている治療アプローチは標準化されていますが、それは抽象的な概念であって、個別具体的な介入に関しては、担当療法士に任されています。

一方で間違ったリハビリ介入としては、安静度を守らない、禁忌姿勢をとる、リスク管理が甘いなどはあります。

この形に残らないサービスであるリハビリテーションに絶対的な正解はなく、常に臨床現場では試行錯誤しながらベストを模索する日々だと感じています。

人材マネジメントが最重要課題である

そして、このリハビリテーションのサービスは「人」によって提供されます。

マネジメントの基本的なリソースは「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われています。

しかし、いくら最新の医療設備、高機能な物理療法の器具、豪華なプラットホームや道具の数々を揃えたとしても、使用する人であるセラピストにクオリティ(質)が伴っていないと、患者さんは良くならないもしれません。

なので、僕ら役職者や教育を担うリハビリスタッフは「医療は人なり」を心得て、コアとなる人材を見出し、いかに教育していくかは、リハビリ部署を運営するには非常に大事な鍵となります。

コア人材の要素に関しては過去記事を御覧ください。

過去記事には「ハイポテンシャル人材」と記載しています。

ですが、、、悩ましいことにリハビリ職は、全員が国家資格所有者であり、労働市場はかなり流動的です。探せば、希望の領域・分野には転職しやすい特徴があります。

なので、職場にこだわらなければ、次の新しい職場を探し転職することは可能です。この辺は医療職のメリット・デメリットでもあり、、、

嫌であれば、なにも無理して働き続けることはなく、自分の望む職場を見つけるまでマッチング可能な面と、、

嫌だったらすぐに辞めてしまうため、管理者としては人材確保に苦悩する面があります。

このため、僕ら役職者としては、場当たり的な教育や人材育成をするのではなく、、

リハビリテーションの「質の向上」を見据えたマネジメントが必要となるのです。

って、言うのは簡単ですが、これを意識的に行うことの難しさが苦悩ですね笑

アウトプットVSアウトカム

前から薄々気づいていましたが、患者さんを良くするリハビリ介入の能力と業務量成績を上げる能力は全く別の能力と思ったほうがいいかもしれないということです。

そうなった時に、今の比較的若いスタッフが多いリハビリ部署に対して、役職者として、我々はどちらを評価するべきなのか?!明確な答えを提示しないといけないと感じています。

それは、どちらを評価するかでスタッフの働きが変わるからです。

例えば、全介助の患者さんをリクライニング車椅子に離床してスタッフは、ただ関節可動域だけ、なんだったら傍でカルテ記入なんかしている。だけど3単位を取得して、1日20単位は業務成績を上げている。月間にすると380単位ほど獲得したが、患者さんが良くなったかどうかは分かりません。。

一方で、患者さんのために考えて、休日も有休を使って自己研鑽として研修会や勉強会に参加する。関連資格も取得しました。リハビリ介入でも家族さんに面会でお会いしたら、リハビリ指導をしたり、病棟看護師に情報を共有したりと連携を図ったり。だけど、1日15単位くらいの取得。有休も使ったので月に340単位でした。。

非常に難しい課題ですよね。本当に。。

役職者としては、業務成績も重要であり、患者さんの改善を図ることも重要です。

まさに二律背反の状態です。

「良いリハビリ」って何だろうか?

僕の努めている職場は急性期病院なので、医療における大切な価値は「人命を助ける」「疾患を治療する」「患者のニーズに応えること」などになります。

しかしながら、病院はボランティアではないので、スタッフの給与や設備投資に資金を回せるくらいの利益を上げることも重要な課題です。まさに二律背反!!

やっぱり働いてて思うのは、医療は公共サービスとしての側面が強いぶん、資本主義経済との相性は悪いと思います。

なので、一つの考え方としては、

「お金を儲けることが医療の質の向上に繋がる」のではなく、あくまで「適切なリハビリサービスを提供し、その質を向上させていくことが、回り回って病院に利益をもたらす」と考えることが大事だと思います。

図にするとこんな感じで、

リハビリ室のマネジメントにおけるアウトカムとそれぞれのリソースの関係性を示すことができます。

では、改めて、この「良いリハビリ」における「質」とはなんぞや?ってことになります。

一般的にリハビリテーション業界では、この質の指標に、ADLを数値化した「FIM」や「BI」。または、在院日数の短縮、在宅復帰率、患者満足度アンケートなど定量化しやすい項目が選ばれています。

ですが、正直に言って、うちのリハビリ部署ではこれらの質を数値化する取り組みは、まだ、十分にできていません。

ですが、僕としては、、、

PS(Patient Satisfaction)よりもES(Employee Satisfaction)が大事だという考えが根底にあります。(この辺の考えは書くと長くなるので、別の記事を設けたいと思います)

端的に言うと、患者満足度よりもスタッフ満足に重きを置くことです。役職者としてね。

なので現在は、、

・新人教育でのチェックリスト

・OTで取り組んでいる疾患別達成度シート

・これから導入予定のクリニカルラダー

などが、リハビリスタッフの質向上を図る大切な施策になると思います。

何より、嬉しいのはこの施策に賛同してくれて、協力しているメンバーに僕は恵まれたということです。

それが、僕のモチベーションを突き動かしている要因かもしれません。

そして、これらの施策を行っていくことで、

リハビリテーションの質は個人ではなく、チームのパフォーマンス

っということを目指していきたいと思います。

ますます、時代の流れとしては、選ばれる療法士、選ばれるリハビリテーション室、選ばれる病院って感じになるのかもしれませんね。

国の政策としても、今後は診療報酬制度において,効率的に質の高い医療を提供している病院に対して、報酬の上乗せを行う「診療成績に基づく支払い( pay-for-performanc)」が浸透して、病院ごとに差が生じるかなぁっと思っています。

今回の記事で参考にした書籍です

ABOUT ME
ganeyan
リハビリ関係の仕事で作業療法士(OT)をしています。 リハビリ関係の資格勉強に関することやマネジメントなどを勉強し発信できたらと思います!

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