自動車運転サポート

リハビリスタッフが知っておくべき!~運転支援に関する法制度に関して~

認知機能低下の患者さんや脳卒中発症後の患者さんに対して、OTやSTを中心としたリハビリスタッフが自動車運転再開を支援することが多くなってきました。

そんな中で、身体機能や認知機能、高次脳機能などの評価を行うことも大事ですが、、、

現在(2022年)の自動車運転に関する法律などについて、

リハビリスタッフが知っておくべき自動車運転に関する法制度をまとめました~~

基本的な自動車運転に関する法制度

まず、リハビリスタッフが把握しておくことが、2つあります。

それは「一定の病気等」と「運転適性基準」についてです!

「一定の病気等」

・幻覚の症状を伴う精神病(統合失調症の一部)

・発作により意識障害または運動障害をもたらす病気(例:てんかんの一部,無自覚性の低血糖症の一部,再発性の失神など)

・自動車等の安全な運転に支障を及ぼす恐れがある病気(そううつ病の一部,重度の睡眠障害,その他自動車等の安全な運転に必要な認知・予測・判断・操作のいずれかの能力を欠くおそれがある症状を呈する病気)

・認知症など

「運転適性基準」

・体幹機能として腰掛けることができる状態

・ハンドル操作やブレーキ、アクセルなどの操作が可能

・視力が両目で0.7以上かつ一眼で0.3以上ある

・視野が左右で150度以上ある

・信号の色(赤、青、黄色)の識別能力がある

・両耳の聴力が10メートルの距離で90デシベルの警告音が聞こえる(例:カラオケの音、騒々しい工事現場くらい)

運転する際のハンドルやウインカーなどの上肢操作、アクセル、ブレーキなどの操作は

テクノロジーの発展もあり、いわゆる運転補助装置が充実したことで

運転適性基準としては条件付きで合格できるケースも増えてきました。

そして、大切な要素としては、、、

やはり、安全な運転に必要な認知・予測・判断・操作が自動車運転には必須の能力となります!!

※ちなみに眼の問題として、この「運転適性基準」に複視は含まれていません。

これまでの運転に関する法律の歴史

これまでの「道路交通法の主な法改正」の流れやトピックを表にするとこんな感じです~

1960年・道路交通法制定
※絶対欠格事由:精神病者やてんかん病者は免許を与えない。肢体不自由等に関しては一定の基準が定められた
1975年・障がい者の適正基準が定められた
1997年・高齢者マークの導入
1998年・免許返納制度の開始
・高齢者講習(75歳以上)の義務付け
2001年・高齢者講習の年齢引き下げ(70歳以上)
2002年・障がい者の免許取得の欠格事由が廃止となる
※運転への支障の有無を個別に判断することになった
・認知症が免許取り消し事由となる
2008年・重度の聴覚障がい者の免許取得が可能となる
2009年・75歳以上のドライバーに講習予備検査を義務付け
※低成績かつ一定の違反者(信号無視など)は認知症か否か診断書提出の義務
2011年・高齢運転者等の専用駐車区間の新設
2014年・免許更新時に一定の病気の申告義務の新設
・医師任意通報制度が開始となる
2017年・講習予備検査の低成績者全員に認知症か否か診断書の提出義務となる
2022年・免許更新時に運転技能検査が義務付けられる(※過去3年間に信号無視などの一定の交通違反のある75歳以上の高齢者が対象)
・サポートカー限定免許の制度

1960年に発令された道路交通法制定の絶対欠格事由では、症状の程度や個人の能力に関係なく、「精神病」や「てんかん」と診断を付けられた時点で、運転の道は閉ざされていました。

ですが、徐々に運転機能の適性基準を設けるようになり、

2002年頃からは、たとえ障害を呈していても、運転への影響を確認して、

個別に対応するような条件つきでの免許発行というのが可能になってきました。

しかし、疾患を隠して運転したドライバーが重大事故を引き起こしたことをきっかけに、2014年からは、免許の取得時や更新時に、「一定の病気等」の症状に関する質問票の記載及び提出が義務付けられました。

そして時代は高齢者を対象とした法律へ

今の日本は超高齢化社会となり、時代の流れとともに法律も対象者を高齢者や認知症の人へ変化してきています。

今現在は、70~74歳のドライバーに関しては、高齢者講習が義務付けられており、

免許更新前には自動車教習所で

・講義を受けたり

・シミュレーターで確認したり

・実車指導を受けて運転技能を確認します。

さらに75歳以上からは、一定の違反行為(信号無視、スピード違反など)があれば、

すぐに臨時適性相談や検査、高齢者講習が行われます。

また、違反行為をしていない、高齢者ドライバーは、

通常の免許更新でも、講習予備検査と言われる「認知機能検査」を実施します。

その認知機能検査の成績次第で認知症の有無を確認し高齢者講習(実車指導)を得て、免許更新となります。

この高齢者ドライバーを対象とした、法制度は年々複雑になり、

より対策が細かく、簡単には運転継続が厳しくなったきた印象です。

そして、やはり自動車運転をするにあたって大事となる

「認知」「予測」「判断」「操作」

この4つは、加齢にともなって緩やかに低下する事は往々にしてあります。

その4つの能力を先進のテクノロジーで補ってくれるのが、

「セーフティ サポートカー」 通称サポカーです!

2022年5月から運転免許更新時に「安全運転サポートカー限定」と

免許証に記載できる制度が新設しました。

サポカーの機能や申請方法などは別の記事にしたいと思います。

今回は簡単に紹介すると、、サポカーの特性はざっくり2つあります。

・衝突被害軽減ブレーキ

・ペダル踏み間違い急発進抑制装置

この2つの機能が装備されていて国土交通省が認定している自動車に限るとのことです。

サポカー限定の免許交付の狙いとしては、

「免許証の返納は迷っているが、生活上ではどうしても自動車が必要な高齢者に対して選択肢の1つとして提案」とのことです。

また、我々リハビリスタッフとしては、どのような高齢ドライバーの方が、

「サポカー」適応となり、安全性と生活のQOLが保たれるのか?を

運転支援の一環として評価して提案できることが大事になってきます。

リハビリが対応することの多い脳卒中関連の法制度は?

リハビリスタッフとして、関わることの多い脳卒中の患者さんですが、

脳卒中(脳梗塞、クモ膜下出血、脳出血)という病名自体は、免許取得の欠格事由とはなりません。

基本的には脳卒中による後遺症や能力の程度は個人差がありますので、個別での対応となります。

しかし、脳卒中関連の症状として、特にフォーカスしていることが「高次脳機能障害」です!

そして、この高次脳機能障害が「一定の症状を呈する病気等」に該当しています(道路交通法第90条及び103条)。

これは、運転する上で必要な「認知」「予測」「判断」「操作」のすべての機能に高次脳機能や運動麻痺が関連しているからですね。

「認知」:周囲の状況を把握する

「予測」:もしかしたら〇〇するかもしれないと予測する

「判断」:状況を把握し”どう”操作するかを判断する

「操作」:ハンドルやブレーキなどを操作する

そして、押さえておきたいポイントとしては、、、

・精神疾患、てんかん、認知症等を既往に持つ、または今回の脳卒中にて合併した場合は免許取り消しの対象となる場合があります(道路交通法第103条,同施行令第33条)。


・特に「てんかん」は,“運転に支障が生じるおそれがある発作が2年間ないこと”が運転再開の条件とされています.発作後2年以内は原則として運転してはならないことが法的に決められています。

脳卒中を発症して、その合併症として脳血管性認知症やてんかんを伴った場合は、

免許取り消しや停止の欠格事由となる可能性があることを理解しておきましょう!

実際の運転免許センター職員のお話し

昨年(2021年)に医療機関・運転免許センター・自動車教習所の各関係者が合同で行う勉強会がオンラインでありました。

そこで面白いと思ったことは、実際に運転免許センター職員の活動内容が聞けたことです。

エピソードとしては、

高齢となり認知機能低下を心配している家族と、自覚がない本人の運転に関する話でした。

それは、免許返納を頑なに拒む本人で、困った家族が運転免許センターの係に相談をして、

実際に職員が、対象者の自宅にお会いしてセッションを行うこともあったとのことです。

セッションといっても、本人やその家族に認知機能検査などの受診を促すとのことでした。

また、かかりつけ医が無い場合は、認知症疾患医療センターへ案内することがあるそうです。

そして、認知症専門医ではなくても、かかりつけ医(地域のクリニック)であれば、運転に関わる診断書を作成することが可能とのことです。

そして、実際には2022年の法改正後、診断書提出命令は認知症だけでなく、

精神疾患や脳卒中、高次脳機能障害の対象者も診断書提出命令がでる可能性があるとのことです。

まとめ

・運転可否の法的判断は公安委員会(運転免許センターなど)にあります。

・リハビリスタッフの役割としては、主に3つあります

 ①自動車運転に必要となる能力の評価やアプローチを行うこと

 ②自動車教習所と連携を図り包括的な運転マネジメントすること

 ③公安委員会に提出が必要とされ、医師が作成する診断書作成の一助となる

運転リハビリに関わることは、かなり複雑ですが法的手順を把握して

患者さんによりよい支援ができる能力が作業療法士には求められています。

この先も法改正は続いていきますが、さまざまな情報を加味して

運転支援ができるようにしていきましょう!

ABOUT ME
ganeyan
リハビリ関係の仕事で作業療法士(OT)をしています。 リハビリ関係の資格勉強に関することやマネジメントなどを勉強し発信できたらと思います!

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