リハビリ療法士がADL訓練を考えるにあたってのマインドとその手順を記載していきたいと思います。
基本的な概念としては目標指向的アプローチに沿っています。

QOL向上のためのADL訓練を!
QOL(Quality of Life)とは、「人生の質」や「生活の質」と言われてます。
その患者さんの、これまでの人生があって、人となりがあるのですから、
障害を呈したあとでもこれから生きていく意味を見出す必要があるんですね。
リハビリで機能訓練をして、ただ単に「腕があがるようになったからいい」とか、
ADL訓練をして「トイレができるようになったからいい」っていう感じではないです。
ICF(国際機能分類)で言うところの「参加」レベルを常に意識することが大切です。
「どこでも行える」ADLを目指します
QOL向上のための生活の普遍化ですね。
例えば、片麻痺になってしまって、家の環境でしかお風呂が入れないようなADL能力よりも。
温泉旅行が好きでいろんな先々でも温泉が入れるような入浴動作を獲得できるような、限定的で視点ではなく、
本人の社会背景を汲み取ったADL動作の獲得を目指したほうが可能性は広がります。
ADLの範囲を広げ役割の再獲得を図る
基本的なセルフケアだけでなく、趣味や家事、遊び、外出、仕事など
社会参加に繋がる土台やきっかけを作ることが大事です。
障害を呈しても、何かしら本人の役割があると自律性は高まる可能性があるんですね。
これまでの生活歴から大切にしていた”作業”を聞き出すことも療法士の技術のひとつです。
患者さんから生活者へ再起するための関わり
ADL自立の重要性を患者さんやご家族に伝えることが大切です。
「過剰な介護」などではリハビリや介助、介護に依存させてはいけないと思います。
また、生活機能と障害の「予後」に立って、患者さんと共に活動や参加レベルの合意した目標を共有することが関わりの中では非常に大事になります。
実際の生活場面・時間帯での活動レベルを評価する
患者さんが抱える問題っていうのは訓練室で起きるのではなくて実際のADL場面で起きています。
カルテや看護師さんからの情報だけでなく、実際場面を観察してみましょう。
その際も、できるorできないではなくて「なぜできないのか」「どうしたらできるのか?」を考えることが大事です。
機能レベルまで落としてアプローチを行う
実際場面で問題となった生活動作を機能レベルまで落とし込んでアプローチする必要があります。
いわゆるアセスメントですね。
ここは、看護師さんや介護福祉士などの病棟スタッフには伝わりにくく、
「介助・ケア」と「リハビリ」の大きな違いですね。
セラピストとしてのプロフェッショナルな部分かなと思いますし、腕の見せ所じゃないですかね~(笑)
移動手段とセルフケアを一連のADLとして繋げる
前回の記事に登場した、トイレ動作の自立に関しても、移動の行程がありました。
ADLというのは単発の活動ではなくて移動を含めた一連の行為として連動させていく事が必要になります。
日々の生活場面への汎化・習慣化を図る
訓練場面に留めず、病棟生活へと展開していくことが大事です。
徐々に「しているADL」となりますので、その際には、細かく指導・説明・指示・許可する必要があります。
例えば、車いすへの移乗が自立になったなら、履物はスリッパではなく靴にしましょう~とか
日中のみ介助バーを使って自立にしましょうなどになります。
チームアプローチとして全員で共有する
以上のことをその患者さんに関わるスタッフ、家族、そして本人自身まで協業して進めていきます。
ここまで来ると、マネジメント能力が非常に大事になってきます。
例えば、歩行訓練などのリハビリ場面の様子を、あえてナースステーションの前で行ってみると、
看護師さんから「歩けるんですね~」と驚かれる事があります。
また応用歩行訓練に関しても歯ブラシセットを両手でもってみて洗面所まで歩いてみたり、
病棟生活のバリエーションを、病棟スタッフの見える環境で行ってみるのもポイントですね。
まとめ
・ADL自立と機能回復の両方を重視する必要がある
・ADLを意識した情報共有が大事
・これからはマネジメントができる療法士が重宝される

今回の記事全般。そしてADL訓練のマインドや手順に関しては、
リハビリテーションの第一人者である上田先生著書の本を参考にしました~
