療法士)「はい! ここの中(平行棒)歩くよ~」
患者さん)「足痛いから、明日にしよう。。」
療法士)「なんでよ!! 歩かないと良くならないよ!!」「はい、立って!」
患者さん)「・・・足痛いのに。。。」
リハビリ訓練の場面でよくある光景です。
若手セラピスト全員がタメ口ってわけでもなく、なかには中堅やベテランセラピストにもタメ口で話すスタッフはいます。
また、若手セラピストの中にも敬語で接するリハビリスタッフも もちろんいます。
ですが、インターネットで「タメ口 職種」と検索すると、上位には看護師やリハビリ、医師などの医療職が多いのも事実です。
そんな、医療従事者~リハビリスタッフの言葉遣いについて記事にしました。
医療者は偉いのか?
リハビリの専門職になるためには、学校でリハビリに必要な医学的な知識や技術を学びます。
また数カ月間の実習を臨床現場で体験する機会もあります。
そんな、実習中に患者さんに対して、タメ口で接するもんなら、バイザーから注意を受けることは容易に想像できます。
また、実習と言う名の学業成績に関わるわけですから、それはもちろんタメ口なんぞの態度では実習に臨まないですね。
これは、当たり前。
しかし、いざ理学療法士や作業療法士などの国家資格を取得した途端に、
ついこないだまでアホ学生だった自分が、患者さんから「リハビリの先生」と言われることもあり、タメ口になる?!
そんな不条理な現象が職場で起きているのです。
有資格者(セラピスト)になった瞬間に、患者さんに対してタメ口になる現象。。。
これはなぜ?なんだろうか?
もしかしたら、それなりの理由やコミュニケーション戦略があるのかと気になって
実際、数名の若手にやんわりと聞いたことがあります、、、
その時の答えとしては、
・くだけた感じで話したほうが信頼関係が作りやすい
・親しみやすい雰囲気を出すために
・ときには強く言わないと、患者さんが言うことを聞かない
などといろんな意見がありました。
なるほど。一理ありますし、それぞれ悪気はなくタメ口を使っていることに気づきました。
病院という特殊な職場
リハビリ学校を卒業後、新卒で入職すると、まず一般的な接遇やモラル、マナーなどよりも、専門職としての成果が求められています。
そんな状況が病院という特殊な職場です。
専門書は勉強しても、社会人としての教養は学ばず、ろくに新聞やビジネス書籍も読みません。けっこう世間知らずのまま歳を取ります。ほんとうに。
そして、患者さん本人から担当セラピストに言葉遣いがどうのこうので注意することは、ほぼないですね。
それは、患者さんとしては、藁にもすがる思いでリハビリに望みをかけています。
タメ口を聞かれようが、それよりもどうにかして良くなりたい、退院したい、治したいと思うので多少のタメ口も甘んじて受け入れますし、まかり通る関係性があります。
あとは、職場のリハビリスタッフ同士の雰囲気もあると思います。
新卒で入職すると同世代が多く、学校のような雰囲気や学生気分が抜けないのか。
これが続くと先輩がタメ口で患者さんと話していると、それを見た後輩もタメ口に。
そして、注意をしない役職者たち。。。
このタメ口を良しとしている組織文化も大きな要因と思います。
また、リハビリの業務上、普段から「患者指導」、「リハビリ訓練」、「治療アプローチ」など。どうしてもこちら(セラピスト)がしてあげて、患者さんが受け身の弱い立場になることがあります。
そして、「自分が治しているんだぞ」感が芽生えて来るのかもしれないですね。
ここまで来ると、傲慢なのか、国家資格を取ったことへの”おごり”かもしれないですね。
※ちょっと脱線しますが、このリハビリでよく使う「訓練」というワード。
僕は年々と違和感を感じるようになっています。
よく使う場面として、例えばROM訓練、歩行訓練、ADL訓練、嚥下訓練などかなり使います。
ですが、中には訓練と言われると、「軍隊」のような厳しい印象を受ける方もいます。
なので気持ちとしては、訓練よりも支援がしっくりくるかなぁと感じています。
第一印象に二度目はない
当院のリハビリは概ね担当制となっています。
そのため、初対面から退院するまでの間、担当セラピストと患者さんとのリハビリテーションの過程があります。
リハビリを円滑に進め効果を出すためには、セラピストと患者さんの信頼関係が重要になります。
この信頼関係の構築は徐々に積み重ねていくものです。
その、第一印象こそがリハビリテーションを提供する上で、重要な入り口となります。
初めて入院する患者さんは、病気になってしまったことへの不安や悲しみの中、リハビリスタッフが初めからタメ口ではあってはいけないですし、信頼関係のスタート時期は敬語が基本であると考えます。
まぁ、中には患者さんとの関係性が作られていく過程で、タメ口を許容されることもあると考えます。
その辺はリハビリテーションの成果とラポール形成の相互関係と思います。
セラピストとして必要な要素とは?
リハビリ業務を行う上でセラピストに必要な要素として、
「知識」「技術」「態度」があります。
特に若手の時期は、この知識や技術なんてものは十分ではないです。
だからこそ、せめて態度だけは、誠実に真摯に患者さんに向き合う必要があります。
その態度がタメ口でいいのかな?って改めて振り返ることですね。
そう考えると、いかに我々がリハビリの資格を持っているだけのアマチュア集団なんだろうと思ってしまいます。
国家試験に合格したから、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士か?
っと問わわれると、語弊を恐れずに言えば、「No」であると僕は思っています。
まがりなりにも、未熟でなんにも分からない若手セラピストのリハビリを受け入れてくれる、、、
そんな患者さんの存在が僕たちを理学療法士や作業療法士、言語聴覚士にしてくれていると思います。
また、僕の肌感覚としては、リーダーや役職者のようなリハビリスタッフは、患者さんに対して安易にタメ口を話さないですね。
そして逆にタメ口で話すスタッフは経験年数が上がっても、そういった重要ポジションに就かない、それなりの大したことない業務にあたっている気がします。
医療はサービス業である
いわば、医療職は患者さんがいることで病院経営が成り立っているサービス業です。
リハビリ職も医師からのオーダーを受けて、患者さんに対してリハビリテーションというサービスを提供します。
ですが、医療職はなぜか、サービス業という感じがしない。。
一般的な飲食店やホテルなどでサービスを受けて悪い印象を持ったら、次回から利用しようとは思わないですし、違う別のお店を探し選びます。
ただ、この医療業界では、人材不足もあり患者さんがリハビリ担当者を選びにくい状況と構造になっています。
SNSでは、「療法士ガチャ」という言葉ができているくらいですからね。
ではどうすればいいのか?
リハビリテーション部署として、態度に関する方針を定めて厳格に遵守することだと思います。
・タメ口が良くないよねっていう理解を全員が認識する
・スタッフの言葉遣いで招いたトラブルや投書などを共有する
・しっかり敬語で接しているセラピストは認めてポジションを上げるなど
知識、技術に程度の差はあれど、せめて接遇や言葉遣いは一定のレベルで、リハビリ提供ができる職場を目指していきたいところです。
リハビリマインドを育むこと
知識や技術は学校で学べたり、現場に出てからは経験も積むことで、ある程度はリハビリの臨床業務を”こなす”事はできるでしょう。
しかし、患者さんという、「ひとりのひと」と接することは今後も続きます。
患者さんは病気になりたくて入院しているわけではないですし、苦しい状況であることが多いため、僕たちリハビリスタッフの態度には敏感です。
患者さんを大切に思う気持ちがそのまま言葉や態度に現れますし、セラピストが発する言動を患者さんは感じ取ります。
そんな、セラピストの「患者さんのために改善を信じて大切に思う気持ち」を僕はリハビリマインドと考えています。
どんなに重篤な状態の患者さんでも、重度な認知症の患者さんでも、
まごころを持って接することができるようになりたいと思う今日このごろ。。
今回の記事で参考にした書籍です。
リハビリスタッフが知るべきセルフマネジメントやセラピストとしての在り方などが記載されている書籍になります。
こちらはリハビリテーションにかかわる人々のエッセイ集となります。
臨床には悩みや不安がつきまとうけど、絶対的な正解はないんだぁと思うような、ちょっとほっこりするエピソードもあり、面白かったです。
まさに病院ってヘンテコだよねって感じることを、良いことも、そして悪いことも現実としてイラスト調になって表現している本です。