2021年の呼吸療法認定試験は第25回~第26回と1年に2回の開催となりました。
また、例年とは違い午後の時間帯のみの試験実施であり、
問題数も100問と限られていたことが特徴です!
実際に第25回の試験を受けて感じたことは、、、
状況設定問題の割合が多い印象でした!
問題数としては、10問程度は入っていたと思います。
そこで今回は状況設定問題を攻略するためのポイントや出題傾向を紐解いていこうと思います!
出題傾向としては?
状況設定問題の出題の傾向としては、全100問のうち10~12問程度だと思います。
また、問題の後半に畳み掛けるように出題されるのではなく、
ところどころで まばらに状況設定問題が出てくる感じですね。
しかも、問題自体も標準テキストの各章ごとに順番よく出てくるわけではないです、、、
例えば、すかさず12問目には血ガスの計算式の問題がでたり、
そろそろ温まってきた、30問目に状況設定問題がでたり、
そうかと思えば、89問目に解剖生理学に関する基礎的な問題が出たりと、
問題の出し方はランダムです(笑)
ストーリーの展開は?
状況設定問題は より臨床的な問題であり、応用力が必要になります。
しかし、それは基礎基本を理解していることが前提となっています。
なので、解剖生理学や血ガスの知識としては最低限 覚えている必要があります~
また、呼吸疾患の状態や年齢・性別、はたまた現病歴・既往歴、喫煙歴といった背景が提示されえており、
加えて、すでに各検査結果(血ガスやSpO2)の数値が出ていて、
しかも、計算式は理解している「てい」でストーリーが進んで行きます(笑)
その状況を汲み取ったうえでの、ケアや治療アプローチの選択をします。
問題のなかには、かなり緊急を要する処置もあれば、
患者指導などの予防的なことなど、
普段の臨床で出くわしそうな状況が組み込まれています。
各分野ごとの状況設定問題を紹介!
ここからは、各分野ごとの状況設定問題を簡単に紹介していきたいと思います。
血液ガスの計算問題
86歳男性の血液ガスの結果から、読み取れる情報として適切なものを選びなさい。
pH:7.352、PaO2:70.5mmHg、PaCO2:66mmHg、HCO3–:35.7mEq/L、BE:8.9mEq/L
a.呼吸性アシドーシス
b.代謝性アシドーシス
c.低酸素血症
d.アシデミア
e.アルカレミア
答え:a
解説:これは、血ガスそれぞれの正常値を覚えておく必要があります。
また年齢が86歳と比較的高齢であり加齢に伴う呼吸機能の低下も考えられるため、低酸素血症には該当しないことが前提にあります。
また、呼吸性アシドーシスの特徴としては、
低換気で二酸化炭素が体内にたまることにより、
身体が酸性に傾く状態になります。
つまりpHが低下する傾向にあることですね。
ちなみに正常値としては、、
pH:7.400±0.005
PaO2:60~100mmHg(※年齢により異なる)
PaCO2:40mmHg±5
HCO3–:24mEq/L±4
BE:-2~+2mEq/L
薬物療法
70歳代男性で、COPDに対する治療として長時間作用型のβ2刺激薬を使用していた。しかし、症状の改善が乏しいため、他の治療薬を併用することになった。既往歴は、肝障害、緑内障、難聴がある。次に選択する治療薬として、正しいのを選びなさい。
a.長時間作用抗コリン薬
b.吸入ステロイド
c.セボフラン
d.テトラサイクリン系
e.ヒスタミンH1拮抗薬
答え:b
解説:ポイントは既往歴に注意することです。長時間作用抗コリン薬はCOPDに対して治療効果は高いですが、緑内障患者には禁忌になっています。
また、それぞれの薬物療法の特徴も抑えておく必要がありますね。
セボフランは吸入麻酔であり、テトラサイクリン系は抗生剤、ヒスタミンH1拮抗薬は抗アレルギー薬のため、それぞれCOPD慢性期の治療薬としては不適切です。
ちなみに吸入ステロイド薬を使用する際に、既往歴に糖尿病がある場合は高血糖に注意する必要があります。
酸素療法の問題
在宅酸素療法(HOT)を必要とする患者が飛行機に登場する際の記述として、正しいものの組み合わせを2つ選びなさい。
a.上空を飛行中は、機内の気圧は1気圧以下となる
b.機内では、酸素投与量を1~2L/分増加する
c.機内でのPaO2の値は、90mmHg以上になるようにする
d.液体酸素の機内持ち込みは可能である
e.酸素ボンベの機内持ち込みはできない
答え:aとb
解説:HOTを使用していても、飛行機に乗って旅行に行けることはいいことですね(笑)
今回のポイントは上空では気圧の変化が生じることです。
飛行中の機内は気圧が1気圧以下となります。
そのため、低気圧の影響で、酸素をうまく取り込めないことによる低酸素血症のリスクから
酸素投与を1~2L/分程度、増量することが望ましいとされています。
また今度は、酸素流量の上げすぎによる、CO2ナルコーシスのリスクもあるため、
PaO2の値は50mmHg以上がいいですね(そもそも、機内で血ガス取らないと思いますが)。
そして、液体酸素は法律で禁止されています。
HOTに関しては、事前に連絡することで機内への持ち込みは可能です。
人工呼吸器の設定問題
誤嚥性肺炎の増悪を認めた患者。高血圧の既往はなくBP128/64mmHgで経過している。喀痰よりMRSAを認めた。この患者の管理について正しい組み合わせを3つ選びなさい。
人工呼吸管理:FiO280%、血液ガス:PaO2100mmHg
a.ウィーニングを開始する
b.テイコプラニンの投与を開始する
c.APRVで管理する
d.1回換気量は6mL/kgで程度で管理する
e.患者の負担を軽減するために体位ドレナージは控える
答え:bとcとd
解説:まずは、吸入酸素濃度(FiO2)が80%とかなり高く設定しておかないと、酸素化(PaO2)が保てない状態であることです。
酸素化の指標のひとつにP/F比があります(PaO2をFiO2で割って出す数式)。
ざっくり言うと、P/F比の値が低いと酸素化が悪く、ARDS(P/F200以下)の状態と予想されます。
症例は、P/F比が125のため誤嚥性肺炎の増悪に伴うARDSと仮定します。
そうすることで、酸素化が低値である状態では、ウィーニングを開始することは適切でないと判断できます。
また、ARDSの病態には、「肺保護換気法」といって、PaCO2の上昇を許容し、低い1回換気量で換気を行う、肺の保護戦略があります(TV:6mL/kg程度)。
加えて呼吸器の設定としては、APRVやBiPAPなどはARDSの病態に有効とされています。
そして、MRSAの感染症も呈していることから、テイコプラニンの抗生剤投与が望ましいと考えます。
小児領域の問題
出生時、吸引後も自発呼吸なし。心拍数95回/分であった。次にすべきことはどれか?
a.心臓マッサージ
b.気管挿管
c.フリーフロー酸素投与
d.バッグマスクによる人工呼吸
e.薬物投与
答え:d
解説:出生後に自発呼吸がないため、まずは胎便吸引症候群を疑い胎便除去に取り掛かったことが読み取れます。
次に心拍数が伴っているため、心停止ではないことが確認できます。
しかし、それでも呼吸不全の状態となっているため、換気改善を図るため、手順として挿管の前に非侵襲的なバックマスクによる人工呼吸の判断だと考えます。
新生児は気管支が脆弱なため、侵襲的な挿管はリスクが大きいです。
レア問題
40歳の女性が庭で蜂に刺されて来院。呼吸困難となり気管挿管し換気を開始したが、全く換気できなかった。この場合考えられるのはどれか。2つ選びなさい。
a.咽頭痙攣
b.気管支痙攣
c.声門閉鎖不全
d.気胸
e.無気肺
答え:aとb
解説:問題の設定としては、何気ない日常生活に起こりうりそうな状況ですよね。ちょっとリアルと思いました(大汗)。
まず、「蜂に刺された!」と言うのがキーワードですね。
刺されたことで毒が体内を回り、「アナフィラキシーショック」を呈したのだと考えます。
ここでの選択肢としてはアナフィラキシーショックの症状を考えると、呼吸器官の痙攣症状に該当する項目が正解になると考えます。
レア問題
動脈血血ガス検査のため、採血を行ったが、採血後に別の仕事に呼ばれたため、血液ガス検体をそのまま室温で30分間放置してしまった。次のうち、検査結果に与える影響として誤っているものの組み合わせ2つ選びなさい。
①PaCO2が低下 ②PaCO2が上昇 ③BEが低下 ④PaO2が低下 ⑤PaO2が上昇
a.①と②
b.①と⑤
c.②と③
d.③と④
e.④と⑤
答え:b
解説:まず問題の背景が面白いですよね(笑)。まぁやっちゃいけないですけど、目まぐるしく忙しい状況で次々と仕事が舞い込んでくる現場なのかなぁと想像しちゃいました。
ポイントは室温(多分だいたい26度くらいかな)で30分間も血液ガス検体を放置したことですね。
そのため、血液内に含まれる白血球などの細胞が代謝されるとのことです。
特徴としては、平均でPaCO2が上昇、pHが低下、BEが低下します。
また、PaO2は値が高いほど低下の幅が大きくなるとのことです。
気をつけましょう(笑)
まとめ
やはり、どの分野の状況設定問題も基礎基本を理解したうえでの応用問題になります。
また、その呼吸器症状を発症した経緯などから原疾患を特定する問題もあります。
僕は医師ではないので、普段の臨床業務で、現病歴から病名を診断することはないですけど、
大事なことは、疾患の特性を理解して、素早く対応する能力が臨床現場では求められます!
なので、状況を適切に把握し、次の行動を選択する能力が試験では鍵となります。