自動車運転サポート

急性期リハビリの運転支援って難しくない!?

僕は急性期総合病院(約400床)のリハビリテーション科に勤務しています。

そこで、今回は当院で実際に行っている運転支援について記載していきます。

急性期病院って在院日数が短いですし、病床数もコントロールされていますので、軽度の脳卒中患者さんは早期退院の対象になっちゃうんですよね。

これが非常にシビアなところで、、、

早期退院支援をしつつ、ニーズである運転再開に向けて、リハビリ評価を数日で行い主治医に報告する必要があります。

そんなこんなの急性期病院の特徴を踏まえつつ、時間が限られている中での運転リハビリの評価とその難しさを記事にしました~

家に帰るけど運転していいの?

脳卒中発症後の主な経過は、だいたい2パターンあります。

1つめは、運動麻痺や高次脳機能障害の後遺症がある場合です。

今後ADLの改善が見込める患者さんは回復期リハビリテーション病院へ転院の方向性なります。そのため、急性期リハとしては一通りの評価を行い次の回復期リハビリへ繋げます。

んで、難しいのがこの2つめの軽度脳卒中などの患者さんです。

脳梗塞や脳出血にはなったものの、幸い症状は軽度でありADLは自立していて自宅には帰れそうである。。

そんな悩ましい症例はこんな感じです。

・軽度の脳梗塞、脳出血症例で歩行やADLは自立

・予防のための動脈瘤クリッピングやコイル塞栓術後の症例

・水頭症疑いでタップテストを行った症例

当院では軽めの脳梗塞等でも一通りの運転リハビリ評価を行います。

内容としては過去の記事をご覧ください!

一通りの運転評価や高次脳機能検査を行い、ADL自立であれば、運転再開が可能であることを主治医へ報告~相談します。

そして、退院前の病状説明(ムンテラ)で主治医から本人と家族へ運転再開が可能である旨を伝えます。

この際に公安委員会(運転免許センターなど)に提出する診断書の書類作成は、

全患者さんには行っていません。

本人や家族の希望に応じて診断書を作成して、公安委員会へ案内しています。

ちなみに日本高次脳機能学会で提唱している「運転に関する神経心理検査法の適応と判断」では、運転再開の文言として、、

・「運転を控えるべき」

・「運転を控えるべきとは言えない」

という表現です。

あくまでもジャッチメントは公安委員会(運転免許センター)ですので、その判断要素としてのリハビリによる運転機能の評価になります。

高次脳機能がグレーな患者さんへの対応

運動麻痺が出ない軽めのラクナ梗塞や微小出血などで、身体機能は良好。

さらに病棟内のADLも自立している患者さん。。。

だけど、高次脳検査では、TMT-Jやレイの図形模写検査などがカットオフ値を下回る場合が往々にしてあります。

その際は病棟内ADLの状況でも高次脳機能の影響が出ていないか確認をします。

そして、ご家族さんへも電話連絡やリハビリ見学を通して入院前と比べて、現在との違いを確認します。

そして、高次脳機能検査がグレーであることを本人や家族に説明して、それでも運転再開の希望を聴取します。

ちなみに、当院では運転再開支援についての同意書はとっていなく、

リハビリテーション総合実施計画書の中に運転支援に関する文言を付け加えており、

リハビリ計画書への本人orご家族のサインを取ることで同意書としています。

そして、経過をみて退院前に再度高次脳機能検査を実施して、その効果判定を行います。

その際、入院から退院までの期間はおよそ2週間程度です。

入院期間中に当院の運転に関する高次脳機能検査やADL評価など総合的に評価して、結果がグレーであれば、退院後は運転を控えるように本人や家族へ伝えて、、、

そして、当院の外来リハビリへと繋ぎます!

外来リハビリの最大期限は脳血管疾患算定期限としていて、発症から180日です。

外来リハビリで行う内容としては、高次脳機能検査で低下を認めた、

注意機能、遂行機能、構成機能、記銘力、視空間認知機能、情報処理能力などなどを鑑みてアプローチしていきます。

外来リハビリ内容

・OTとSTによる2単位ずつのリハビリ介入

・動作性の二重課題(ダブルタスク)

・机上課題

・エルゴメーターを漕ぎながらの机上課題(ペグボードなど)

・車椅子駆動による縦列駐車で視空間認知の訓練

・バインダークリップの上にボールを載せて、落とさないように歩行+しりとりなど

・ゴミ箱のペダルを一定時間、一定の踏力で維持し机上課題

・お手玉キャッチしつつ色分け作業

・ポインティング課題(オーバーテーブルを斜めに傾けて数字のシールを散りばめて順序or逆唱を5桁~7桁実施)

そして外来リハビリの期間が1ヶ月程度経過して高次脳機能症状をみて、改善傾向にあれば、、実車評価の必要性を主治医へ相談して、許可を頂き自動車教習所へと繋ぎます。

自動車教習所との連携

沖縄県では実車評価を受け入れいてくれる教習所が限られています。

主にちゅら島の移動を考える会に所属している南部地域に1校と北部地域に1校がメインに実車評価を行っています。

そして、中部地域では現在3校が条件付きで受け入れ可能です。

実車評価までの流れとしては、、

①担当療法士にて実車評価の受け入れが可能な自動車教習所へ電話連絡をする

→実車評価が可能な日程を確認して患者、家族と調整する

②運転リハビリに関する情報共有シートを作成する

③自動車教習所へ情報共有シートを提出する(※教習所によって提出方法は異なります)

④実車評価を実施(※担当療法士の同行はなく、本人と家族のみ)

⑤自動車教習所の教官による評価結果用紙を記載

⑥後日、評価結果用紙をいただく

このとき、自動車教習所の実車評価結果としては、あくまでも運転再開が可能かどうかのジャッチメントはされていません。

内容としては、構内コースや路上評価の結果が記載されているだけです。

大まかな流れとしてはこんな感じですが、自動車教習所によっては、、

7~9月or12~1月は高校生や大学生などの免許取得が優先となり、繁忙期はなかなか実車評価の受け入れが難しく、1ヶ月待ちのこともあります。

そして、実車評価の結果用紙をみて総合的に判断して、公安委員会(免許センターなど)の安全運転相談へ案内します。

その際は、運転に必要な診断書の作成を行います。

沖縄県に関しては診断書を沖縄県警のホームページからダウンロードできます。

https://www.police.pref.okinawa.jp/docs/2017090700060/

沖縄県警察 診断書のダウンロードについて

運転免許センターへの案内は?

運転に関する診断書が完成したら、今度は免許センターの安全運転相談を受けて頂きます。

その際は、本人や家族にて予約連絡を行います。

そして安全運転相談の趣旨としては、、、

安全運転相談は、一定の病気等をもつ方が免許を取得あるいは継続する上で、安全運転に支障がないかどうかを判断するものです。
 一定の病気等をお持ちの方をひとくくりに運転不可とするのではなく、個々人の病状に即して運転免許の取得(継続)を判断し、道路交通の安全の確保と対象となる方の社会参加を両立させることが安全運転相談の趣旨です。

当日の流れとしては、、、

必要なもの

  • 運転免許証(お持ちでない方は本籍地が記載された住民票抄本)
  • 診断書
  • 障害者手帳、ペースメーカー等の手帳、診療計画書、その他参考になるもの

面談の内容

 面談では、安全運転相談係員が病状の経過や運転の可否などについてお伺いします。時間はおよそ20分~30分ですが、内容によりそれ以上かかることがあります。
 実際に車やオートバイに乗車してもらう場合がありますので、運転に適した服装・靴でお越しください。

https://www.police.pref.okinawa.jp/docs/2017090700022/

沖縄県警察 安全運転相談

最終的には免許センターで運転再開が可能かどうかの判断を受ける形となり、

当院のリハビリによる運転再開の支援は終了となります。

急性期リハビリの運転支援のスタンスとは?

当院で自動車運転サポートチームを2019年に立ち上げて、それなりに症例を経験してきました。

その中で急性期リハビリの運転支援として感じたことは、、、

「対象者が訴える運転再開のニーズに応えること」

これが、急性期の運転支援のスタンスだと思います。

なので、仮に運転リハビリ評価の結果が悪かった場合は、1ヶ月や長いと半年(脳血管算定期限の180日)を待ちますけど、それでも辛抱強く寄り添うような

支援・サポートをする姿勢(マインド)だと思います。

僕ら医療者は警察ではないので高次脳機能障害が顕著であったとしても取り締まる様な正義感はいらないです。

あくまでも運転再開の可能性を対象者と一緒に探すこと。

そして、高次脳機能障害の影響が運転に及ぼす場合は、そのリスクを伝えることが

僕ら急性期リハビリスタッフの役割だと想います。

ABOUT ME
ganeyan
リハビリ関係の仕事で作業療法士(OT)をしています。 リハビリ関係の資格勉強に関することやマネジメントなどを勉強し発信できたらと思います!

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