効果的なコーチングを行うためには、ただ単にクライアントの話を傾聴して、目標に沿った質問をするだけでは上手くいかないこともあります。
今回はコーチングのプロセスを紐解いていきますが、プロセスには大きく分けて2つあります。
それは、、、
・コーチングの「構造」
・コーチングの「フロー」
スポーツにしても芸術にしても、しっかりと基本の形・手順・仕組みなどのプロセスを理解して取り組むことで熟達していく過程で、自分なりのアレンジが効いてきます。
例えば、野球にしてもピッチャーはフォームを学ぶことから始まりますし、ゴルフは正しいスイング軌道を習得することでスコアが上がります。書道にしても基本の形がありますね。
ということで、今回はコーチングにおける構造を解説していきます。
コーチングの構造とは?
コーチングはクライアントの話を聞く、話すだけの会話の連続ではないです。
下図のようなそれぞれの土台となる要素(部分)からコーチングセッションを成り立たせており、長期的(3~12ヶ月)な視点から継続的な関わりを通して、最終的にはエバリュエーションを確認します。
そして、コーチングの構造を成り立たせている要素は主に4つあります。
・コーチングを始めるための準備や顔合わせ、合意形成となる「プレコーチング」
・クライアントの理想とする状態を明確化する「目標設定」
・目標達成に向けて定期的に行われる「コーチングセッション」
・設定した目標の達成度やクライエントの変化の振り返る「エバリュエーション」
それでは、それぞれの要素を確認しましょう。
コーチングの質を左右する「プレコーチング」
プレコーチングは実際のコーチングセッションが始まる前に、コーチとクライアントのお互いで行う準備時間として、しっかり丁寧に進めていきます。
そしてコーチングセッションの鍵を握るため、このプレコーチングでは以下の5つを意識して実施します。
なぜ?コーチングを受けることになったのか?を確認します。
コーチングを受ける経緯は様々です。自ら希望したのか?それとも会社からの依頼なのか?企業の育成プログラムの一環なのか?などなど。
そのため、コーチングを受けるきっかけを確認することでクライアントのコーチングに臨む姿勢やコーチングに抱いている印象を把握します。
医療分野で言うところの「説明と同意」や「インフォームドコンセント」になります。
なので、始めの段階でティーチングやカウンセリング、コンサルティングなどと混同してしまわないように、、、
「コーチングをする意図は常にコーチングを受ける本人自身(クライアント)の目標達成であり、目標に至るまでの成長である」ということをクライアントと共有し合意を得ます。
信頼関係を形成するための基本は、お互いを知ることから始まります。まずはコーチからオープンかつ正直に自己開示をすることでクライアントに安心感を持ってもらいます。
コーチングはあくまでも対面でのディスカッションではなく、共に伴走するスタンスの対話(ダイアローグ)であることを共有して、対等な関係性。つまりは信頼関係を築く重要な時間、シチュエーションになります。
コーチがどんなに「成長してほしい」「行動してほしい」と望んでも相手にその気がなければ変化は起きませんしコーチングの成果は乏しい結果となります。
主体的であるということは、同時に行動と結果に責任を持つということでもあります。コーチングの本質はクライアントの目標に向かった「行動」であり、本人自身が行動と結果に責任を持つことを求められるということをプレコーチングの段階で伝えましょう。
そして「コーチングを受けるかどうかを最終的に決めるのはあなた自身である」という選択肢を問いて、クライアントの主体性に焦点をあてます。
このコーチングを何に向けてスタートするのか方向性を確認します。
・仕事で達成したいこと
・キャリアビジョンについて
・やりたいと思っていたけど手が付けられないことについて
などなど。
ただし、プレコーチングの段階では、大まかな方向性(テーマ)を決めることにとどめて、次項の目標設定に移行していきます。
目標設定とビジョンメイキング
クライアントの理想とする状態(ビジョン)を明確にしていきます。
コーチの語源となった馬車(Coach)は、目的地まで人を乗せる意味があります。
馬車は移動手段であり、、現代ではタクシーになりますが、
そのタクシーの乗った際に「適当に走ってください」とは言わないでしょう。
目的地を伝えることで、運転手はタクシーを走り出します。
この目的を見据えて、目標を設定し最終地点(ゴール)にたどり着くための設定を、、
クライアントとともに行うことが肝要です。
この目的地となる行き先がなければコーチングは始まりません。
例えば、「趣味のゴルフで仲間とラウンドしてQOLを高めたい」という人生の目的を持ったとします。
そしたら、まずはゴルフスクールに通って、ゴルフレンジでまっすぐボールを飛ばすことからが目標になるでしょう。
その次に実際にラウンドに出てコースを回りスコアをまとめてプレーすることが目標となりました。
そして、より練習して上達した後に、最終的には仲間といろんなコースを一緒に周り、プレーすることで最終目標(ゴール)へとなり、
本来の目的である、「趣味のゴルフで仲間とラウンドしてQOLを高めたい」へ繋がることが目標設定のイメージになります
また、最終目標(ゴール)に至るためには様々な、計画や必要なスキル習得、行動や学習などを定量化して目標を設定してきます。
この、目標設定とビジョンメイキングはかなり大事な要素であり、ボリューミーとなるので、また別の記事にしたいと思います。
コーチングセッションのポイントは「フロー」
これは次項のコーチングフローで扱いますので、ここでは触りだけ説明します。
主にコーチングフローは6つのステップがあり、全体を通してナビゲーターの役割があります。
さらにコーチングセッションは、下記の表が一般的な設計要素になります。
実施機関 | 3ヶ月~半年~1年間 |
実施頻度 | 毎週1回~月1回 |
形式 | 対面、オンライン、電話 |
場所 | 個室、オープンスペース、会議室など |
時間 | 10分~60分 |
そして、やはり、コーチングの原理原則である「インタラクティブ」、「テーラーメイド」、「オンゴーイング」が重要です。
それは、1回1回の関わりでも、クライアントの目標達成に向かって過去のコーチングからの繋がりを意識しながらコーチは対話を継続していきます。
エバリュエーションのポイント
エバリエーションを通してクライアントは自分自身の変化や成長、得られた成果を確認します。そしてコーチ自身もコーチングの何が機能して、何が効果を発揮したのか等を、お互いの共通認識として把握します。
1回のコーチングセッションのあとに行うことから、コーチング期間を終了したあとの振り返りとして行うなど、相対的に実施していく必要があります。
そして、エバリエーションの注意点としては以下の3つがあります。
1.感想や憶測だけを扱わない
これは、「~だと思います」「~と感じました」などの感想にとどまらず、事実も確認しましょう。例えば、「ゴルフが上手くなった感じがします」から「ゴルフのラウンドスコアが初めて100を切りました」などです。
2.自己評価から他者評価の順で振り返るようにする
現状を客観的に把握するためには、他者評価の視点も必要になります。その際はまずは自己評価して自身の内観を表出してもらいます。そして、他者が捉えた評価を振り返った後に、改めて、他者評価についてクライアント自身の考え(エバリエーション)を聞きます
3.多面的にエバリエーションする
クライアントの目標に向かって進むためにも、今の現在地をいろいろな角度から、そして俯瞰して見るようにして、コーチはフィードバックを意識することを心がけます。