ついに1次試験の最後の4項目となりました。これまでの3項目は過去記事をご覧ください!
今回の項目では、、、
○認知症ケアの基礎
○認知症ケアの実際Ⅰ総論
〇認知症ケアの実際Ⅱ各論
○認知症ケアにおける社会資源
「認知症ケアにおける社会資源」についてまとめています。
今回の項目を理解するためのポイントは3つあります!
・医療や介護、年金など社会保障制度の仕組みを覚えましょう
・政府の高齢者、認知症施策を把握して介護や医療の方向性をおさえましょう
・介護サービスやインフォーマルの種類や特徴を理解しましょう
ここの社会資源に関しては、医療保険や介護保険をはじめ、様々な制度や権利など多くの法令関連の問題が問われます。
そのため、介護保険改定や制度の変更があるたびに学習者は常にアップデートし続ける必要があります。認知症の人とその家族をサポートする社会的なしくみを覚えて理解しましょう。
認知症ケア専門試験での出題傾向としては、2025年に向けて構築される「地域包括ケアシステム」をもとに地域密着型サービスや権利擁護に関して多く腫大されると予測されます。
それでは確認していきましょう!!
高齢者や認知症に関する社会保障制度の仕組み
社会資源とは?
「生活する中で抱えるさまざまな問題や要求を充足させるために提供される、人・物・金・知識なども含めた社会サービス」の総称です。
そして、社会資源には2つのサービスに分類されます。それぞれの特徴と本人、家族のニーズに合わせた組み合わせが大事です。
フォーマルサービス | インフォーマルサービス | |
特徴 | ・画一的なサービス ・最低限のサービスが保証 ・地域差が少なく公平的である | ・柔軟な対応が可能 ・安定した供給が難しい ・専門性にバラツキがある |
提供主体 | ・民間法人(株式会社等) ・行政 ・医療法人 ・社会福祉法人 ・NPO | ・地域の団体、組織 ・ボランティア ・友人 ・近隣の人 ・家族 |
認知症ケア試験で出題される主な社会保障制度は以下の4つです
①医療保険制度
②介護保険制度
③所得保障制度(年金や生活保護など)
④権利擁護制度(主に成年後見制度)
それぞれの特徴と制度の仕組みを確認していきましょう。
○特徴
年齢によって制度が異なります。75歳以上では後期高齢者医療制度となり、窓口での支払いは原則1割負担です。しかし、現役並み所得者は最大3割負担となります。この制度は高齢者にも一定の保険料を負担してもらい若い世代とのバランスを取りながら高齢者の医療費を安定的に支える特徴があります。
○仕組み
財源としては、後期高齢者の保険料と現役世代の支援金と公費で成り立っています。割合は1(後期高齢者):4(現役世代):5(公費)です。
後期高齢者医療広域連合とは?
都道府県単位で後期高齢者医療の運営を行う、特別地方公共団体のことです。
○特徴
高齢者の自立支援と尊厳の保持を基本理念として持続可能な制度を目指しています。そして以下の5つの特徴があります
・介護を社会全体で支える
・負担と給付の関係を明確にして国民全体の理解を得る
・福祉、医療、保健の介護サービスを総合的に利用できる
・多くの事業者の参入により多様なサービスを供給できる
・自立支援を目的とし要介護状態の悪化を防止する
○仕組み
強制加入の制度で、住民票のある市町村が保険者となります。また年齢と特定疾病によって保険料の納付方法や給付の条件が異なります。
第1号被保険者 (65歳以上) | 第2号被保険者 (40~64歳) | |
保険料 | 提供サービスの量に応じて決定 | ①全国集計された費用額に応じて医療保険者に割当 ②各保険者の算定ルールに従って、個人の保険料が決定 |
納付方法 | ①保険者に直接支払い ②年金が年額18万円以上の場合は天引き | 医療保険と合わせて徴収 |
使途 | 加入している保険者の費用 | 社会保険診療報酬支払基金に集められ、各保険者に一定割合が配分 |
保険給付 | 要介護・要支援の認定を受けて給付 | 特定疾病を有し、要介護、支援状態に認定されて給付 |
要介護認定までの流れ
16の特定疾病(40~64歳の第2号保険者)
①がん(末期)
②関節リウマチ
③筋萎縮性側索硬化症(ALS)
④後縦靭帯骨化症(OPLL)
⑤骨折を伴う骨粗鬆症
⑥若年性認知症
⑦進行性核上性麻痺、パーキンソン病などの神経疾患
⑧脊髄小脳変性症(SCD)
⑨脊柱菅狭窄症(LSS)
⑩早老症(ウェルナー症候群)
⑪多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群)
⑫糖尿病性神経障害、腎障害、網膜症
⑬脳血管疾患(CVA)
⑭閉塞性動脈硬化症(ASO)
⑮慢性閉塞性肺疾患(COPD)
⑯著しい変形を伴う変形性関節症
○特徴
加入者が保険料を拠出して、収めた額と年数に応じて給付を受けられる社会保険方式です。現時点の現役世代の保険料拠出と国庫負担で賄う賦課方式で期限を設けない終身年金となっているのが特徴です。
○仕組み
国民年金 | 職域を問わず20歳以上~60歳未満は全員介入となる。すべての年金制度の基礎年金の支払いの基となる。 |
厚生年金 | 加入者は基礎年金の国民年金保険料を含めて年金保険料を納付する。給付時には国民年金にプールされた基礎年金を同時に受け取る。 |
〇その他の特別年金
・障害年金:一定レベル(ADLに介助を要する状態の後遺症)の障害がある場合に支給されます。条件としては国民年金加入前に初診日がある場合は保険料を支払っていなくても20歳から支給されます。一方で20歳以降の場合は国民年金に介入していないといけません。支給額は障害の等級によって異なります。
・遺族年金:国民年金に介入中もしくは介入期間の3分の1以上の保険料滞納がない人が死亡した場合、扶養されていた18歳未満の子と配偶者に対して遺族基礎年金が支払われます。そして、被用者の場合(サラリーマンなど)は、遺族厚生年金があり、遺族基礎年金と合わせて受給できます。
○特徴
認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人を保護して支援するための制度です。基本理念は、「自己決定権の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」です。
成年後見制度では、家庭裁判所が一人ひとりの状況に応じて適切な成年後見人を以下の3つから選びます。
補助 | 判断能力が不十分な人を対象に本人の同意のもと補助人が選出されます。主に重要な財産行為の補助などを行います。 |
保佐 | 不動産や金銭などの財産管理を単独で行うことが難しい状態の人が対象となります。本人が行う財産行為については保佐人の同意を得る必要があります。 |
後見 | 本人の代理として法律行為全般を行い、本人が行った不利益な行為を取り消す事が出来ます。 |
○仕組み
成年後見制度の利用手続きの流れ
政府の認知症施策の把握と今後の方向性
老人福祉法や老人保健制度は医療費の増大によって財政的にパンクすることが予見されていました。さらに少子高齢化が急速に進み要介護者や認知症の人が増加傾向にあります。
そんな中、介護保険制度関係を抜本的に見直し、社会全体で高齢者やその家族を支える仕組みづくりを目指して様々な施策を行ってきました。
そこでキーワードとなってくるのが、「地域で暮らす」です。
そのため、国は2025年を目処に「地域包括ケアシステム」の実現を目指しています。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/link1-5.pdf
厚生労働省 ホームページより引用
地域包括ケアシステムでは、①住まい ②医療 ③介護 ④予防 ⑤生活支援サービスの5つが一体的に提供され、重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けていくための体制を目指しています。
認知症の人を地域で支えていくために、まず行った施策としては2004年に痴呆の呼び名を「認知症」へ改めました。その後は、認知症の人が地域で暮らしを続けていくためには、地域住民の理解が必要になります。
そのための第一歩として、普及啓発キャンペーンを行い2021年には地域の「認知症サポーター」は1300万人を超えました。
さらに、2018年には全国の市町村に「認知症初期集中支援チーム」の設置を進めてきました。このチームは認知症の人や家族に関わり、個別の訪問支援やアセスメント、家族支援などを初期の段階から取り組むことで、認知症の早期診断および早期対応を実現すべく、地域での自立生活のサポートを行っています。
この認知症初期集中支援チームの取り組みが、地域包括ケアシステムの土台となる「本人の選択と本人、家族の心構え」の役割も担っています。
そして、住み慣れた地域で暮らし続けるためには、初期段階のアプローチだけでなく、その後も地域の関係者がシームレスな連携と協働し認知症の人を支えていくことが必要です。その役割を担っているのが「認知症地域支援推進員」です。
厚生労働省 「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」について
現在では各市町村の地域包括支援センターまたは認知症疾患医療センターに認知症地域支援推進員が配置されており、初期集中支援チームと連携を図っています。
そして、地域にあるフォーマル、インフォーマルのさまざまな社会資源を活用すべく、関係機関と地域に合わせた社会資源を結びつける認知症地域支援推進員はコーディネーター的役割を担っています。
認知症の人が利用できるサービスの種類と特徴
介護保険制度における介護サービスでは、主に居宅サービスと施設サービスの2つに大別されます。さらに要介護状態にならないように、その前段階の介護予防を重視した日常生活総合支援事業のサービスを利用できます!
在宅生活を継続するために利用できるサービスです。特に訪問介護・通所介護・短期入所介護は「在宅の三本柱」と言われています。
最近では市町村が管轄する地域密着型サービスに定期巡回訪問介護、看護などを組み合わせた複合サービスも利用できます。
居宅サービスには1訪問、2通所、3短期入所、4地域密着型の種類にカテゴライズされます。それぞれの特徴は以下の通りです。
1訪問サービス
訪問介護 | ホームヘルパーが居宅を訪問して、食事や排泄などのセルフケアの介護や調理や掃除、買い物などの生活援助を行います。 |
訪問看護 | 看護師が居宅に訪問して褥瘡の処置や、経管栄養の管理など医学的管理が必要な際に主治医の指示のもとサービスを利用できます。医療保険よりも介護保険が優先されます。末期がんや難病疾患の際は医療保険で利用できます。 |
訪問リハビリテーション | 主治医の指示のもと利用者のニーズに応じて理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリ専門職が居宅を訪問して介入を行います。 |
訪問入浴 | 自宅での入浴が困難な事例や重症で移動が難しい場合に、入浴設備をもつ特殊な車両で居宅を訪問して入浴介助を行います。 |
福祉用具貸与 | 介護ベットや車椅子などの介護用品をニーズと要介護状態に応じてレンタルできるサービスです。入浴や排泄関連の介護用品については購入費が支給されます。 |
2通所サービス
通所介護(デイサービス) | 送迎付きで入浴や食事などのセルフケアの介護やレクレーションを行うサービスです。またニーズに応じてリハビリ特化型の機能訓練をメインとしたサービスもあります。 |
通所リハビリテーション(デイケア) | 送迎付きで理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による専門的な機能訓練を行うことの出来るサービスです。 |
3短期入所サービス
短期入所生活介護 | 短期で入所してお泊り感覚で利用できるサービスです。家族を介護疲れから開放するレスパイト的な要素があります。 |
短期入所療養介護 | 介護老人保健施設、療養型病床群などを有する病院や診療所などに短期間入院、入所して、医学的管理に基づく看護や介護を受けるサービスです。 |
4地域密着型サービス
認知症対応型通所介護 | 認知症の人専用の通所介護サービスであり、利用人数は12人までと小規模に設定されています。 |
認知症対応型共同生活介護 | グループホームと言われています。小規模の環境の中で介護者の支援や援助を受けながら、入居者自身が食事の支度や掃除、洗濯などをして共同生活するスタイルのサービスです。 |
小規模多機能型居宅介護 | 定員29名の小規模単位で通所サービスを中心に短期入所の宿泊や訪問介護サービスなどを組み合わせた複合的サービスです。 |
夜間対応型訪問介護 | 夜間帯に訪問して介護を提供します。定期巡回と随時対応サービスがあります。 |
施設に入所して受けられるサービスです。居宅サービスとの差を縮めるため、2005年からは食費と住居費が自己負担となっています。
介護保険の施設サービスには介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設にカテゴライズされます。特徴は以下の通りです。
介護老人福祉施設 | 定員30名以上の特別療養老人ホームです。常時介護が必要で在宅生活が困難な要介護3以上が対象です。 |
介護老人保健施設 | 在宅復帰を目的としたリハビリ施設です。医師や看護師、リハビリ専門職が配置しており、医学的管理のもと介護・機能訓練を受けられる。入所期間は原則3ヶ月~6ヶ月までとされています。 |
介護療養型医療施設 | 症状は安定して特別な治療の必要はないが、長期にわたって医学的な管理が必要な要介護者が対象となります。廃止の方向性にあるが要介護者の受け皿がなく延期となっています。 |
軽い要介護者が増加傾向にあることから2006年より介護予防を重視した体系に変わりました。現在では要支援に認定された人には①予防給付の仕組みが適応され、介護認定される前の高齢者には②地域支援事業の仕組みが導入されました。
この仕組みをマネジメントしているのが「地域包括支援センター」です。
①予防給付
要支援の人が要介護状態にならないように、また再度自立した状態に戻れることを目標とした支援サービスです。
特徴は都道府県指定の介護予防サービスと市町村指定の地域密着型介護予防サービス及び地域包括支援センターが一体的となりその役割を担っています。
認知症高齢者の日常生活自立度がⅡ以上の場合は予防給付ではなく介護給付が適応されます。
②地域支援事業
介護保険を受ける前の虚弱高齢者を対象に、介護予防プログラムを実施します。それ以外の一般高齢者向けには、ボランティア活動や地域における介護予防、体操、健康式の促進事業などがあります。
主な介護予防プログラム
・運動機能の恒常
・栄養改善
・口腔機能の向上
・閉じこもり予防、支援
・認知機能低下予防、支援
・うつ予防、支援
地域包括支援センターの役割とは?
介護予防ケアマネジメント | 虚弱高齢者と要支援者に対して介護予防ケアプランの作成を行います |
総合相談 | 地域の高齢者の実態把握、関連機関との連絡調整など |
包括的・継続的マネジメント | 困難事案などへの助言、長期的支援など |
権利擁護事業 | 権利擁護に関する相談、成年後見制度の利用支援、虐待発見のための地域ネットワークづくり等 |