1次試験の大まかな範囲としては、4つの項目から成り立っています。
○認知症ケアの基礎
○認知症ケアの実際Ⅰ総論
○認知症ケアの実際Ⅱ各論
○認知症ケアにおける社会資源
その中でも今回は、「認知症ケアの基礎」を3つのポイントにまとめて記載します!
・これまでの認知症ケアの移り変わりを理解しましょう。
・認知症とは何か?病気の特徴が問われます。
・認知症予防などの取り組みも知っておきましょう。
それでは確認していきましょう!
認知症高齢者の現状とケアの変遷
かつては、認知症が「痴呆」と言われ、理解されなかった時代から、徐々に認知症ケアの考え方が広く一般に浸透してきました。そんな時代の変化とともに日本は急速な高齢化社会を迎えています。
こちらは、2012年に発表された厚労省のデータです。
この推計では、団塊世代が後期高齢者となる、いわゆる「2025年問題」に認知症人口が約700万人となり65歳以上の5人に1人が認知症になることが予測されました。
そこで、政府は2012年に「認知症施策推進5カ年計画」通称:オレンジプランを発表します。この施策では①早期診断 ②早期対応 ③認知症の普及・啓発 ④見守りなどの生活支援の充実など地域での生活継続を可能にすることを提案しました。
そして続く2015年には「新オレンジプラン」を発表して①認知症初期の支援体制の強化 ②地域で支える介助や医療サービスの充実化 ③若年性認知症施策のなど様々な仕組みづくりをアップデートしました。
ここの政府の認知症政策に関しては、新オレンジプランの内容が1~2問程度は出題されるのでおさえておきたいポイントです
また、認知症ケアの基礎となる「パーソン・センタード・ケア」は例年多く出題される傾向にあります。認知症への対応から認知症の人を理解するケアへと変遷する過程をおさえましょう。
これまでは、医学モデルに基づいて身体的ニーズに対応し、提供者の一方的な管理と効率性を重視したケアがオールドカルチャーとされてきましたが、
これからは、認知症の人の個性や物語を重んじるケアで、その人の立場に立ち理解を重視するニューカルチャーを提唱しています。この、オールドカルチャーとニューカルチャーの違いも理解しましょう。
認知症という病気の特徴
ここでは認知症の医学的特徴である、中核症状と行動・心理症状(BPSD)を理解することが大事になってきます。
生後発症した身体疾患が原因で起こる知的な働きの障害(認知機能障害)で認知レベルの低下が中心的な症状としています。
主に記憶障害、見当識障害、判断力障害、遂行機能障害などの症状があります。
BPSDとはBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの頭文字の略です。直訳は行動心理症状です。
・Behavioral(ヴィヘイベル):行動
・Psychological(サイコロジカル):心理的
・Symptoms(シムプトム):症状
・Dementia(ディメンティア):認知症
BPSDは中核症状が背景となって起きる心理的な変化や行動の異常で、主に感情的な変化や精神症状的な言動を指します。
さらに、認知症の原因となる病気としては、主に以下の4つが挙げられます。
認知症のタイプ | 原因 | 症状 |
---|---|---|
アルツハイマー型認知症 | 老人斑(アミロイドタンパク)と神経原線維変化(タウタンパク)などの異常タンパク室が脳に沈着して脳萎縮を進行 | 記憶障害や見当識障害、遂行機能障害などの中核症状をベースとして、妄想や誤認からくる「物盗られ妄想」があったり、猜疑的になったり、意欲低下などのBPSDが現れることがある。 日常生活については、一般的に家事などのIADLの失敗から始まり、徐々に基本的なセルフケアの失敗に進行する過程をたどる |
レビー小体型認知症 | 脳内にレビー小体という異常な細胞内蓄積物が確認出来る。また脳波の異常や脳血流量の変化も特異的である。 | アルツハイマーとパーキンソン病を併せもつ特徴がある。幻視とパーキンソニズムの症状が見受けられる。 |
脳血管性認知症 | 脳卒中後の後遺症の一つとされている。病巣部位の場所や大きさなどにより認知機能の障害の程度が異なる。 | 急激な認知症状の始まりと症状に波があることが特徴である。また、認知機能の一部が保たれていることから出来ることと出来ないことがあり「まだら認知症」と言われている。 |
前頭側頭型認知症 | 前頭側頭葉変性症の一つである。その中にピック病も含まれる。 | 性格や行動面の変化が特徴である。脱抑制や非社会的行動を取ることもあるため介護困難となりやすい。ゆっくりと進行することも特徴である。 |
この項目では認知症とは「年のせい」ではなく、病気であることをおさえましょう。
特に中核症状やBPSDなどの認知症特有の症状やその原因となる認知症の種類なども例年問題が多く出ます!
認知症ケアの取り組み
この項目では主に政府が2019年に取りまとめた「認知症施策推進大綱」がベースとなっています。
主に①認知高齢者を取り巻く物理的・社会的環境への整備 ②チームケアの重要性 ③認知症予防への取り組みを重点的に理解しておさえておきましょう!
○物理的環境
身体機能だけでなく精神症状にも着目して、普段過ごしている環境の変化や光、音、匂いなど五感で感じる刺激でも影響を受けます。「安心できる環境」「心地よい環境」「自分の居場所」を確保することが重要です。
○社会的環境
ここでは、家族や友人、地域の知り合いなどのインフォーマルケアの理解と介護保険制度の施行後の専門職が介入するフォーマルケアの制度を把握する必要があります。最近ではどちらのケアも組み合わせた「認知症カフェ」や「見守りネットワーク」など地域によって特色のある街づくりも盛んになってきました。
対象者を中心として多職種で協働し問題解決を図ることが重要となっています。
チームケアに求められるスキルとしては
・個人の専門分野の能力
・他職種への信頼と敬意
・メンバーシップとリーダーシップの両方の資質
・目標の明確化と成果の共有
・葛藤への対応と相互理解の努力
認知症予防の取り組みとしては「認知症発症の危険因子を減らす」取り組みを行うこととしています。
・認知症発症遅延やリスク低減(一次予防)
・早期発見、早期対応(二次予防)
・重症化予防、機能維持、BPSDへの対応(三次予防)
3つの局面があります。
さらにここの項目では認知症予防の考え方として、
運動や食事、知的活動や社会ネットワークが認知症の発症に影響していることを理解した上で、、
「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム」「フレイル」といった加齢に伴う運動機能の低下が要介護状態に至ることを把握しましょう。
その中でも「フレイル」について紹介します。
フレイルとは健康な状態と日常生活でサポートが必要な状態の中間を意味しています。身体機能だけでなく、精神的、心理的な状態や社会的な問題も含めて、加齢に伴う様々な機能低下をもたらします。例えば転倒による自信損失や独居生活による寂しさ、家族の死などです。
このフレイルは早期発見と適切な介入をすることで、元の健常な状態に戻ることの出来る可逆性のある要因です。認知症予防では一次予防にあたります。
そのフレイルの予防策としては、、、
○「栄養」:食事内容の改善、良質なタンパク質の摂取。口腔ケアの実施
○「身体活動」:ウォーキング、ストレッチ、低負荷な運動機会を作ること
○「社会参加」:趣味活動、地域交流、ボランティアの参加、シルバー人材などの就労
つまり、フレイルが心配な人には「食べて、動いて、人と繋がる」というライフスタイルが効果的です。
今回は認知症ケア専門試験の中でも、認知症ケアの基礎を重点的に記載しました。