当院(急性期病院)のリハビリテーション室の新人教育マニュアルをアップデートしました。
4年ぶりに。
それは、毎年のように新卒採用をしていますし、時代とともに教育体制も改訂していく必要があるからですね。
そして、役職者やベテランは、新人や若手が育たないからと嘆くのではなく、、、
体制としてシステムとして新人教育を構築していくことが大事です。
今回はそんなウチの教育体制に関する記事です。
全てはプリセプター任せ!?
プリセプターとは、医療・看護業界で浸透している新人教育の担当制度です。
先輩看護師が新人看護師に対してマンツーマンで看護業務に関して指導する新人教育制度です。
当院のリハビリ室でも、これまで新人療法士に3~5年目くらいの先輩療法士がプリセプターとなり、マンツーマンでの個別指導を行ってきたました。
ですが、当院リハビリ室のプリセプターの業務範囲は非常に曖昧であり、そしてかなり膨大でした。
例えば、、、
・新人さんが独り立ちするまでは、常にカルテやサマリー、計画書のチェックをしたり、
・ときにはリハビリアプローチの技術的指導をしたり、
・新人さんが回診やカンファレンスに出席するときは同行して補助したり、
・新人さんの症例検討会のときは資料内容のフィードバックから当日の司会進行など、、、
それはもう多岐にわたります。。
そんでもって、新人さんがミスしたり、業務の抜け漏れがあれば、それに気づいた別の先輩療法士が、新人さんにではなく、担当のプリセプターに指摘するという構造になっていました。
それでは、誰もプリセプターを引き受けたくないですよね。
そんな、教育体制を少しずつ少しずつ、仕組みから変えていきたいと思い、教育委員会に入って、間もなく丸4年になります。
約1年前にプリセプターに関する記事を書いています。
年々、僕の中でもつながる思いはあるのだと気付かされます。
とにかく仕組み化
安藤広大さんの本のタイトルをパクりました(笑)
考え方としては参考になる部分も多かったです。
サブタイトルにもあるように、プリセプター(個人)は責めずに、ルールを見直す必要がありました。
そのため、これまでは「プリセプター業務マニュアル」としていた、教育システムを「新人教育マニュアル」と名称を変えて、
リハビリ室全体として、一人ひとりのリハビリスタッフが、新人療法士の教育を担うことを明確化しました。
具体的には、日本理学療法士協会が2022年に発表した「新人理学療法士職員研修ガイドライン」を大いに参考にして、当院のリハビリ室にマッチさせて改変しました。
https://www.japanpt.or.jp/pt/lifelonglearning/education_training
公益財団法人 日本理学療法士協会「新人理学療法士職員研修ガイドライン」
まず、ウチのリハビリ室は部門別にグループ制となっています。
そのグループ内でもそれぞれのリハビリスタッフが教育にかかるように役割を明確にしました。
プリセプター | 社会人としてのマナー、仕事への責任感など自分自身がお手本を示しロールモデルとなることが求められる。また、新人の良き相談役となり助言や支援を行う。そして、新人教育に携わるうえで困難や問題が生じた際は2者完結せずにリーダーや役職者への報告、相談を行う。 |
グループメンバー | プリセプターの協力者として、ときには代行して基本的な情報収集、カルテ記載、書類作成、患者介入までの一連のリハビリテーション業務の「やり方」を伝える。 |
グループリーダー | 新人及びプリセプターの状況確認を行い、必要に応じて臨床業務の助言、指導を実施する。また、新人教育の負担がプリセプターに偏らないようにグループ内での調整を行う。 |
役職者 | 専門職として、療法士としての「在り方」を示す。またリハビリ室の教育の方針や計画を立案し周知する。 そして、プリセプターやリーダーの育成を図る。 |
教育委員会 | リハビリスタッフの「学びをサポート」するシステム作り。 チェックシートや教育マニュアルの整備、改訂。また、年間の勉強会や症例検討会のスケジュール調整、研修学会費の申請援助などを行う。 |
教育の答えは遅れてやってくる
そうなんです。今すぐ結果を求めてはいけません。
そして、「俺の時代は~こうだったとか」
「今の新人はもっと危機感に追われて勉強するべきなんだ!」とか
そういうのは、もう要らないです笑
新人教育というのは時間をかけて、経験を積み重ねることで成果が出てきます。
それは経験学習理論と言われる、4つのサイクルがあります。
具体的な経験 | 与えられた仕事に果敢に挑戦し具体的に経験する |
内省的観察 | 多様な視点で振り返る |
概念的抽象化 | 「なぜそうなったのか?」「どのようにすればよかったか?」などを一般的な考えと言葉で抽象的にまとめる(要は何?とする) |
能動的実践 | 抽象化した概念を教訓として、他の場面でも活用できるように実践する |
そして、新人教育制度も「やりっぱなし」にならないように「振り返り」から、物事を抽象化して教訓として概念に落とし込んできました。
それは、これまで毎年2回は、新人教育に携わる、プリセプター、グループメンバー、リーダー、部門長、部署長、教育委員会が一堂に介して新人教育の実施状況の確認と意見交換、ディスカッションを行ってきました。
いわゆる「プリセプターミーティング」ですね。
そこで得た知見と現場のプリセプター達の声を拾い、教育マニュアルを改定した経緯があります。
そうです!
新人やプリセプターが抱えている課題や問題を個人の責任にせず、リハビリ室としてキョウイク(教育、共育、協育)していく組織文化を醸成していくことが大事になってきます。
そうすることで、リハビリ室の教育は武器になります。
やはり、教育というのは緊急ではないけど、重要な案件です。
いかにそのことに、役職者やリーダーが熱意を持って取り組めるかで、「リハビリの質」は決まってくると言っても過言ではないような気がします。
大きな組織。小さな自分。
僕の所属している職場は全国規模の医療グループです。そのため、個人の力は小さくても構いません。
また、ウチのリハビリテーション室には、スーパースターやカリスマセラピストはいません。
個人の能力に頼りすぎると、依存性がましてしまい、良くも悪くも、その個人に大きく影響されてしまいます。
そして、教育者やマネジャーにも特別な能力は必要ないと思います、
僕もなんてことのない そんな一人です。
大切なのは、、地道でも考え抜く力と泥臭ささ、そして相手のことを思いやる優しさだと思います。自分は3分、他人は7分くらいの利他的な心持ちですかね。
やっぱり教育に不正解はありますけど、正解はないです。
そして、誰も答えを教えてくれません笑。
ずっとこれからも、とどまることなく進化し続ける必要がありますね。
つまりは、
進化する教育体制としては、「教育する側」のスキルアップが求められますね。