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「確かな臨床力を!」〜OT協会山本伸一会長が考える作業療法の未来〜

10月末に沖縄県那覇市にある琉球リハビリテーション学院で日本作業療法士協会の山本会長の講話がありました。

そこで山本会長がお話ししてくださったことは、

OT協会が取り組んできたこと、

今の作業療法士の立ち位置や置かれている現状のこと、

そして、これからのリハビリテーション業界の未来についてお話ししてくださり、

とても考えさせられるテーマでした。

今回の記事はそんな山本会長が考える作業療法の未来は明るいのか⁉︎

そして、僕たちに出来ることは何なのか⁉︎

僕の所感も含めて書いていきます。

山本会長のイメージは臨床叩き上げの現場主義者

僕が初めて山本伸一先生を知ったのは、「作業療法における上肢機能訓練アプローチ」の本でした。

以前、僕が勤めていた職場は脳疾患専門の急性期病院でしたので、OTとして上肢の運動麻痺や感覚障害、手指巧緻訓練などをアプローチする必要がありました。

が、当時の僕は訳もわからずストレッチとマッサージ程度のなんちゃって作業療法でしたので、このままではマズイと思い、貪るようにこの本を読んでいたのを思い出します。。。

この本は解剖学や運動学の基礎からわかりやすく解説していて、そして実際の臨床場面へ展開された内容になっていて、僕の上肢機能アプローチの礎になっています。

んで、専門書の著者である山本先生は現場主義の臨床叩き上げのイメージがありました。

また、国際ボバースインストラクターの資格も持っているので、脳卒中のリハビリテーションの達人なんだろうな〜という印象でした。

そんな山本伸一先生が2023年から新6代目の日本作業療法協会会長になったことは、リハビリ業界ではニュースになりました。 

OT協会が取り組んできたこと

今回の講話で初めて知ったことがあります。

それは、OT協会のこれまでの渉外活動の大変さについてです。

山本会長曰く、PT協会はOT協会の10年先を行っているとのことです。

だからこそ、PT協会は国会議員を3人輩出しています。

そして、国会議員になった理学療法士の方々がリハビリテーション専門職のために処遇改善を実施したり、職域を守ったりと政治活動をしてきました。

それは、リハビリ専門職がこれからも患者さんや対象者、国民の健康と福祉のために、意義と誇りを持って働いていけるための取り組みだということです。

一方でOT協会としても、これまでに呼吸器疾患や心大血管疾患などの診療報酬算定に関してOTもできるようになったり、通所リハビリでの生活行為向上加算を取得できるようになったりとその事実は知っていても、、、

実際どのように渉外活動をしていたかは知らなかったです。

10数年前までの当時のOT協会は中村会長や山本副会長が厚生労働省の関連事務所を伺っても1mmも相手にされず、オフィスの受付で「資料置いといて」と言われるだけで、返される事もあったとのことです。。。

また、当時の山本副会長は山梨リハビリテーション病院に勤務していましたので、

東京でそういった政府への渉外活動をして、そのまま翌日は山梨の職場へ戻り臨床業務を行っていたそうです。

当時は朝の4時〜5時に山梨に戻ることも多く「午前様」と言われていたそうです。

作業療法士がリハビリテーションや医療において重要であることを政府や国にアピールすることは物凄く大変で労力と時間がかかったと、その講話を聞いて初めて知りました。

OTの現状とこれからの未来

山本会長のお話では、どの医療職の中でもリハビリ専門職がここ20年間、賃金が変わらないとのことです。

さらには女性OTの離職問題。これはキャリアとライフステージ(結婚や出産などによる)の相違が原因だと言います。

また、OTの退職の理由の一つに「賃金が安い」ということもありました。

そんなOTの資格と地位が変わっていないことに関して、山本会長は「OT協会は現場で頑張るOT会員にためにある」とおっしゃっていました!

来年度(2024年)には医療・介護・福祉サービスの診療報酬を同時に見直す「トリプル改定」が予定しています。

この診療報酬改定こそが、僕たちOTの給料に直結する大事な事象になります。

多分若手のリハビリスタッフは、働いている病院や職場で給料が決まっていると思うかもしれませんが、それはちょっと違います。

僕らリハビリスタッフの給料の財源はこの診療報酬、医療保険や介護保険によって大枠が決まっています!

あとは所属先での分配率の変更。これは役職者に昇格する、関連専門資格を取って資格手当を貰うなどがあります。

僕らができることは「確かな臨床力を」実践すること!

20年間、賃金が変わらないOTがどうしたら良いのか⁉︎

山本会長はOT協会として、各領域にバランスの良い作業療法士の配置を明言しています。

それは、急性期や回復期などの病院勤務に7割以上偏っているOTが、今後は各領域に必要な割合で携わることだと言います、

特に強調していたのが、

・緩和ケアへのOTの導入

・子ども政策への関わり

・軽度認知症へのアプローチ

この3つへ関わることのできるOTが少ないことが現状の問題であるとしています。

地域でのOTの活躍、訪問リハビリなどの介護保険領域でのOTの役割を担うことで、社会的により作業療法士が必要とされ今後の作業療法の未来は明るいとおっしゃっていました。

だからといって、今所属している病院を即辞めて、地域にでるぜ!!

ってことではなくて、今目の前にいる患者さんに真摯に向き合うこと。

日々の臨床を大切にすること、担当している患者さんの今後の生活を見据えること。

生活を見据えることが、今後の地域リハへ繋がるとのことです。

また、山本会長は「確かな臨床力を」掲げていました。

そして、OT協会に入ることで、「臨床能力を高められる教育体制」を構築していきたいとのことです。

それは、PT協会のような登録制度とのことです。

ここからは僕の所感ですが、、

おそらく、近い将来OTも自己研鑽を怠った「見習いOT」と実力のある「認定OT」の二極化になるのでは?っと思っています。

それは、国家資格を持ったから一人前の作業療法士だ!!

ってわけではなくて、、OT協会主導の登録OT制度ができたら、、

各専門OT→認定OT→登録OT→見習いOTのヒエラルキー的な構造になると思います。

んで、この登録OT以上の認定や専門OTになるためには、現場の仕事だけでなく、学会発表や研修会参加などの自己研鑽が必要です。

だからこそ、僕の想いとしては、OT協会の政府への渉外活動として、専門/認定OTを取得したら、診療報酬に加算をつけて欲しいと思います。

つまり、頑張っているOTはちゃんと認めて加算をつけて賃金を上げてあげるということ。

そしたら、病院や施設は同じリハビリでも加算を取得できる作業療法士を重宝すると思います。

OT協会とキャリアデザイン

周りの作業療法士はOT協会に入る意義を知りません。

それは、何故かというと、、

「年間1万円以上も出して、何のメリットがあるのか⁉︎」

「OT協会は会員に何をしてくれるのか⁉︎」

「OT協会が何の活動をしているか分からない」

などなどのいろんな意見があります。

まぁ、一理ありますし、分からないでもないですが、

自分自身の立場を考えたら、そのような考えは捉え方の違いだと思いました。

一個人のOTとしては出来ることは、本当に限られていますけど、みんなで結束したら国を動かせるだけの力はあると思います。

OT協会が個人に何をしてあがられるか⁉︎ではなくて、一個人として社会に何を還元できるか⁉︎という視点も必要だと、今回の山本会長の講話を聞いて思いました。

回復期病院の身体障害領域でバリバリの脳卒中上肢機能訓練を積み重ねてきた山本会長ですから、もっとファンクション(身体機能)にこだわるかと思っていました。

けれども、やはりOTもバランス良く、どの領域でも活躍できる体制作りが必要と再認識できました。

ABOUT ME
ganeyan
リハビリ関係の仕事で作業療法士(OT)をしています。 リハビリ関係の資格勉強に関することやマネジメントなどを勉強し発信できたらと思います!

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