呼吸療法を理解するうえで大切な呼吸生理のメカニズムを3つの視点で捉えるシリーズ。
今回は呼吸リハビリテーションとも関連が深い「駆動系」です。
前回記事のコントロールと次回のガス交換との一連の流れを通して、呼吸のメカニズムを体系的に捉えていきましょう。
呼吸の駆動とは?
呼吸中枢からの司令を受けて実際に「呼吸のための運動」を行うことを指します。
肺への空気の出入りを行うために呼吸筋や胸壁、胸膜。そして空気の通り道である気道も含めれています。
そのため、呼吸中枢はしっかりしている、そして肺自体も正常に機能してる。
だけれども、呼吸の駆動系が機能しないことには息を吸うことも、吐くこともできずに、苦しくなり呼吸不全へと陥ってしまいます。
自然な呼吸は〇〇呼吸である
ポイントとして、、、
吸気時に働く筋肉は「横隔膜」と「外肋間筋」の2つです。
そして、呼気時は特別に筋肉の作用はなく受動的に肺から外へ流れ出ます(※ちなみに、咳など努力的に呼気する場合は腹直筋と内肋間筋が働きます)。
僕たちは普段何気なく呼吸をしていますが、
その自然な呼吸は「陰圧呼吸」というメカニズムで成り立っています。
ではその陰圧呼吸のメカニズムを理解するうえで大事なことが、肺と胸壁は密着している特性があるということです。
(※厳密には2つの胸膜とその間にある少量の胸水があります!)
そして、肺には常に内側に縮もうとする働きがあり、胸壁は外に広がろうとする働きがあります。
左右の肺と心臓が収まっている胸腔は、強固な胸壁(肋骨や胸骨)と横隔膜で出来た陰圧な空間です。
その陰圧な空間の容積は呼吸筋の働きによって変化します。
ざっくり簡単に言えば吸気筋の働きによって胸腔が広がり、そのため胸腔内圧は更に陰圧になります。
胸腔内の陰圧によって肺が広げられると、肺の中の圧は大気圧よりも低くなるため、圧較差が生じて空気が口・鼻から肺に流れてきます。
これが陰圧呼吸のメカニズムです。
人は「FRC」を基準にして呼吸している?!
それでは、ゆっくり呼吸してみましょう。
そして楽に息を吐いてください。
この吐き終わったときに肺に残っている空気の量が、FRC「機能的残気量」であり、
人の肺の基本となる大きさです。
ちなみに、このFRC(機能的残気量)は呼吸機能検査で測定することが可能です。
ではなぜ?FRCを基準に呼吸をしているのかと言うと、、、
FRCが酸素化と密接に関係しているからです!
呼吸は「吸気」よりも「呼気及び呼気後」の時間のほうが長いです。
つまり、FRCが増加することによって呼気及び呼気後の時間で肺の含気量が増して、より長い時間より多くの酸素が血液とガス交換することができるようになります
そんな酸素化と密接な関係があるFRCですが、
肺の広がりやすさ(コンプライアンス)で決まります。
肺コンプライアンスが乏しくFRCが小さくなることで換気が十分に行えず慢性呼吸不全の原因となることがあります。
一方でギラン・バレー症候群のように呼吸筋が麻痺して十分に機能せず、吸気が行えず呼吸苦を生じることがあります。
その場合も換気が不十分となりPaCO₂が上昇し呼吸不全となります。
やはり、肺自体の機能が正常でもそれを動かす駆動系の機能に問題があると呼吸不全を起こす可能性があります。
そして、次回はいよいよ肺の中で行われているガス交換系について記載していきます。