症例検討会の在り方を考える~患者さんからの学びを、リハビリテーション部署全体のスキルへ~
「充実した症例検討会とは何だろうか?」
毎月のように症例検討会を開催しています。
しかし、発表することが目的になっていないだろうか。
質問が出ない。
質疑応答が形式的になる。
発表者だけが頑張る会になっていないだろうか。
そんなことを考えるようになりました。
今回は、リハビリテーションの事例検討会(症例発表など)に関する書籍の内容と、僕自身が日頃感じていることを踏まえながら、「症例検討会の在り方」について書いてみたいと思います。
そもそも、なぜ症例検討会を行うのか?
・新人教育のためでしょうか。
・プレゼンテーション能力を高めるためでしょうか。
・学会発表の練習でしょうか。
もちろん、それらも目的の一つです。
しかし、症例検討会の本質について、このような考え方があります。
「症例報告は臨床と研究をつなぐ第一歩である。」
日々の臨床で経験した一人の患者さんから疑問が生まれる。
その疑問を整理し、振り返り、仮説を立てる。
さらに研究へ発展し、新たな知見となって、再び臨床へ還元されていく。
つまり、
症例検討会は、臨床経験を学びへ変えるための場なのです。
患者さんが、私たちを本当の療法士に育ててくれる
とはいえ、ウチのリハビ部署は研究に馴染みはないので、あまりピンとは来ないかもですね笑。
それでも、若手の時から症例検討会を行うには意味を持って取り組むことが大事です。
なぜなら、
語弊を恐れずに言えば、、、
国家試験に合格したからといって、一人前の療法士ではないんですね。
本当の意味で療法士を育ててくださるのは、
目の前の患者さんです。
不十分な知識。
未熟な技術。
それでも、経験の浅い僕たちを信じ、リハビリテーションを受けてくださる。
その一つひとつの出会いや経験が、僕たちを成長させてくれます。
だからこそ、その経験を自分一人のものにして終わらせるのではなく、
リハビリ部署全体の学びとして共有し、
次の患者さんへ還元していく。
それが、患者さんへの一番の恩返しなのかなぁ。っと思っています。
ある意味では、症例検討会とは患者さんへの感謝を形にする場でもあるんですね。
「症例」と「事例」の違いを知る
まぁ、ちょっと細かい話ではあるのですが、
「作業で語る事例報告‐作業療法レジメの書き方・考えた‐」の書籍に、「症例」と「事例」の違いについても整理されていました。
症例は、疾患や病態、機能障害など医学的な側面に焦点を当てます。
一方、事例は、その人の生活や環境、家族、社会参加まで含めて考えます。
リハビリテーションは、疾患だけを診る仕事ではありません。
「その人らしい生活」を支援する専門職です。
だからこそ、症例検討会では、医学的な視点だけでなく、その人の生活背景や価値観にも目を向けることが大切なのだと思います。
良い症例検討会とは何か
良い症例検討会には共通点があると思っています。
「この症例を紹介します。」
だけでは、議論は深まりません。
例えば、
「なぜこのリハビリ介入で改善したのか。」
「一方で、なぜ改善しなかったのか。」
「他にも方法はあったのではないか。」
最初に問いがあるからこそ、
参加者も一緒に考えることができます。
いろんな書籍でも、
症例報告は単なる経過報告ではなく、
「何を伝えたいのか」
が重要だと示されていました。
「この患者さんを通して何を学んだのか。」
「どんな臨床的示唆が得られたのか。」
聞き終わった後に、
参加者が一つでも持ち帰れるものがある。
それが良い症例検討会だと思います。
珍しい疾患だから価値があるわけではありません。
症例報告の価値は「珍しさ」ではなく、
臨床的な教訓や仮説を生み出すこと
にあると話されていました。
「この視点は明日から使えそうだ。」
そう思える症例には、大きな価値があります。
コルブの経験学習モデルなどが、この理論に当てはなるかなっと思っています。
症例検討会では、
正解を発表する必要はありません。
むしろ、
「なぜそう考えたのか。」
「他にどんな選択肢があったのか。」
そこに価値があります。
発表者の人柄や価値観、そして臨床推論が見える発表は、とても魅力的です。
「発表する患者さんがいない」という言葉について
一方で、若手スタッフから、
「発表できる患者さんがいません。」
という声を聞くことがあります。
でも、
患者さんは僕たちが発表するために存在しているわけではありまん。。。
大切なのは、
普段から臨床へのアンテナを張ることです。
・自分が担当している領域の文献を読む。
・他施設の症例報告を読む。
・学会へ参加する。
などなどに興味を持ち続けることが大事になってきます。
そうすると、
目の前の患者さんを見た時に、
「担当している患者さんから学べることがある。」
という視点が出てくるといいですね!
症例を探すのではなく、
問いを見つける力をつけること。
それが、療法士として成長する第一歩なのだと思います。
リハビリ室の教育委員会として
症例報告は、一例から仮説を生み出し、その仮説を次の臨床へつなげていく営みであるということです。
だから症例検討会は、単なる発表会でも反省会でもありません。
患者さんから学び、仲間と考え、その学びを次の患者さんへ還元するための時間にしたいですね。
僕は、そんな文化をリハビリテーション部署の中に波及出来たら良いなぁと思っています。
そして、一人の患者さんとの出会いが、一人の療法士を育て、その学びが部署全体へ広がり、さらに多くの患者さんへ還元されていく。
その循環こそが、症例検討会の本当の価値かな。

